道は今年度、函館市大森地区(日乃出町)の海域にヤリイカの産卵礁を整備する。市漁協や市の要望を踏まえたもので、函館でのヤリイカの産卵礁設置は20年ぶり。ヤリイカの産卵に適した場所を増やすことで資源を増大し、漁家経営の安定につなげる考えだ。
道は1999~2001年度に函館市入舟、寒川、立待、大森の4地区にヤリイカの産卵礁を設置。渡島総合振興局水産課によると、産卵礁にヤリイカの卵が産み付けられているのを確認し、整備に一定の効果があったという。
道水産現勢(水産統計)では、市の13~19年の7カ年でヤリイカの漁獲量は14年39トン~17年351トンと年変動が激しい。直近の19年は70トンだった。スルメイカに比べると、数量ははるかに及ばないが、沿岸漁業の重要な資源だ。
昨年、市漁協と市から産卵礁に関する要望が寄せられ、国の補助を受けて道が産卵礁を施工することになった。大森地区では小型定置網でヤリイカを漁獲している漁業者がおり、漁具に卵が付着している実績もあることから、同地区を選んだ。
計画では、浜から約500メートル離れ、水深約10メートルの7800平方メートルの海域にコンクリート製の円形ブロック138基を設置する。1基は直径約3メートルの円盤が2枚重なり、高さは約1・15メートル。円盤の裏側(台の下)にヤリイカが卵を産みつける。ブロックは完成し、強度を確かめた上で秋サケ定置網漁終了後の12月中旬以降から来年1月にかけて設置する。ヤリイカは産卵礁に来春~初夏に卵を産み、成長したヤリイカが戻ってくる23年春以降に漁獲できる見通し。
道は現在、道津軽海峡地区(松前~椴法華)での水産基盤整備事業(22~31年度)について水産庁と協議中で、22年度以降に住吉、入舟両地区でのヤリイカ産卵礁整備も計画している。
ヤリイカは産卵のため沿岸に寄って来る魚で、身は薄いがスルメイカより味に甘みと品があり、すし種として重宝される。同課は「回遊魚のスルメイカを増やすのは難しいが、沿岸に居つくヤリイカの産卵場所整備に力を入れ、資源の増大に貢献したい」としている。
市水産課は「ヤリイカはこれまで漁獲が安定していなかったが、産卵礁の設置で漁獲が安定し、漁業者の収入増につながってほしい」と期待を込める。(山崎大和)