【東京】20日に開かれた大間原発差し止め訴訟の第8回口頭弁論で、原告の函館市側は原子力規制委員会が策定した原発の新規制基準をはじめ、耐震設計やフルMOX(ウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を全炉心に装荷する)など、安全性に対する問題点を数多く主張した。
新規制基準の不適合性を主張する上で、市側が問題視したのは規制委の構成だ。委員5人中3人が原子力推進機関や原発関連事業の出身者だと指摘し、「独立性が確保されているとは言えない」とした。策定作業開始から約8カ月で施行に結びつけた点について「検討期間が絶対的に不足している」と主張したほか、田中俊一委員長の発言に関し「『安全だとは申し上げない』と繰り返し述べている。新規制基準に適合しても安全とは言えないことを意味している」とした。
大間原発で耐震設計の目安となる地震の揺れ「基準地震動」に対しては抜本的な見直しが必要とし、「どこまでの不確かさを想定すべきなのかが曖昧なままで、実質的に事業者の裁量次第で決まってしまう実態は、福島原発事故前と大きく変わっていない」と批判。MOX燃料についても「万が一の場合に過酷事故につながりやすい、いくつもの特徴が存在する」とした上で、新規制基準でMOX燃料に特定した基準が存在していないと指摘した。
原告代理人の中野宏典弁護士は、高浜原発3、4号機に対する大津地裁決定などを踏まえ「行政の裁量が事故の影響で非常に狭くなっていることを主張していきたい」とした上で、「こちらの主張が整理し切れていない面もあり、より精緻化していく」と述べた。
また、今回から裁判長をはじめ、裁判員3人がすべて交代した。これについて原告代理人の只野靖弁護士は裁判後の報告集会で「だいたい3年で交代するので、争点は多岐にわたるが、あと3年しかない。(口頭弁論後の進行協議で)裁判長はゴールを見据えて取り組みたいと言っていた」と明かし、積極的な審理に期待した。(千葉卓陽)