遺愛学院(函館市杉並町23、福島基輝理事長)は、函館市元町の伝統的建造物のひとつで、1913(大正2)年に建築された遺愛幼稚園の木造2階建て園舎の耐震改修工事を実施している。工事費の一部には、本年度から市が制度を拡充した伝統的建造物を対象とした補助金600万円を活用し、2階部分の内壁をはがして補強用のボードを埋め込む工事を進めている。同学院は「今後100年間、建物を持たせ、園児たちの安全のためにも工事を進めている」としている。
遺愛学院は1874(明治7)年に始まり、82(同15)年に現在の幼稚園の場所に女学校を開校。幼稚園は95(同28)年に開園した。1907(同40)年の函館大火によって校舎・園舎は焼失し、女学校は現在の杉並町に移転し、幼稚園は元町で再建した。杉並町の本館(1908年建設、国指定重要文化財)は、国内に数多くの教会などを残したジェームズ・ガーディナーの設計で、5年後に完成した元町の園舎にも下見板張りや長窓など、雰囲気が継承されている。
市は本年度、伝統的建造物群保存地区保存事業費の補助対象に、耐震改修費用を追加。対象工事費の80%以内、上限額を600万円が補助できるように見直した。市まちづくり景観課の長谷山裕一景観政策担当課長は「伝統的建造物で建物の外観に手を加えることができず、内部からの補強に限られるため、工事費も掛かる。幼稚園は子どもたちが使う施設でもあり、安全確保が必要」とする。
遺愛学院によると、工事は2年間に渡り、夏休み期間に実施し、総工費は2600万円。内壁に耐震性を高めるボードを埋め込み、しっくいを塗って元通りに仕上げる。本年度の工事は職員室などがある2階で、工期は8月末まで。副園長で増田宣泰事務局長は「現役の園舎としては国内で2番目に古く、4世代にわたって遺愛幼稚園出身という人もいる。子どもたちが通ってくれる限り、幼稚園を運営していく」と話している。(今井正一)