函館市消防本部(近嵐伸幸消防長)は新年度、聴覚や言語機能に障害がある人が、スマートフォン(スマホ)などの画面操作で緊急通報できる「Net119緊急通報システム」を導入する。画面のタッチ操作とチャット機能で細かい内容を伝えられるほか、外出先でも通報できるのが特徴で、迅速な救護活動につなげる。
同システムは、国が全国の消防本部に対し、2020年度までの導入を促している。昨年6月時点で全国に726ある消防本部のうち、168本部がシステムの運用を開始。道内では、伊達市などを管轄する西胆振行政事務組合消防本部が既に導入している。
利用には住所や名前、生年月日などの事前登録が必要。任意で既往歴などを入力する項目もある。通報時は、GPS(全地球測位システム)機能付きのスマホやタブレットの画面で専用サイトにアクセスし「救急」または「火事」を選択する。
消防は、通報者の個人情報や所在などを瞬時に把握。消防車や救急車を現場に向かわせるとともに、文字による会話で詳細な状況を聞き取る。通報先は現在地を管轄する消防本部につながるため、同システムを導入している自治体であれば、函館市外でも利用可能。負傷箇所をスマホで撮影し、画像を送ることもできる。
市によると、聴覚や言語機能に障害がある市民は、昨年11月時点で約1000人。音声を使わずに緊急通報する手段は、これまでファクスに限られていた。函館市消防本部は導入に当たり、1月30日に同本部でシステムの説明会を開き、約20人の参加者からは好評だったという。
今後は広報紙「市政はこだて」やホームページで告知し、6月にシステムへの登録会を開催。7月1日の運用開始を目指す。
同本部消防指令センターは「事前登録していれば、函館を訪れた観光客も利用が可能。導入で速やかな救助活動に役立てたい」としている。(山田大輔)