1879(明治12)年の公園開設から140周年となる函館公園(青柳町)に21日、幕末から明治初期に函館で英国領事を務めたリチャード・ユースデンゆかりのライラック4本が植えられた。札幌市公園緑化協会の協力で、育てられた1メートルほどの木で、順調に根付けば、2~3年程度で花を咲かせるようになるという。
函館公園は、ユースデンの提唱に賛同した函館市民が資金や造成に協力して開設。ユースデン夫人は本国からライラック、セイヨウグルミを取り寄せて、公園開設記念に植えた。1892(明治25)年には渡英した渡邉熊四郎(初代)が、公園で咲いたライラックの写真をユースデン夫妻に届け、喜ばせたという話が残っている。
このユースデンゆかりのライラックの原木は1954(昭和29)年の洞爺丸台風で枯死したが、原木のひこばえから市民が育てた木が残っており、さらにその木を受け継いだ三島清吉北大名誉教授(故人)が87年に道立工業技術センターに寄贈。この木も衰弱したが、2008年10月には、同センターのライラックから得た株を函館公園に〝里帰り〟させた。
今回、新たに植樹したのは、同協会の協力で同センターのライラックを元にして美唄市の道総研林業試験場で茎頂培養して生長させた株。08年に植えた木の付近に2本と、旧図書館前にあるユースデンゆかりのクルミの前に2本を植えた。
同協会は、昨年5月に約250種、1700本のライラックがある川下公園(白石区)にこのゆかりのライラックを移植しており、ユースデン夫妻の思いは、函館と札幌で大切に受け継がれていくことになる。同協会の庵原英郎技術主査(43)は「日本でも最古に導入された由緒あるライラック。2~3年後には花を付け、5年ぐらいで2メートルほどの高さに生長する。順調に根付いてもらいたい」と話した。
市土木部公園河川管理課の山本寛人課長(54)は「札幌市の協力で函館公園にライラックを増やすことができた。市民と一緒にこの木を育てていきたい」と話していた。(今井正一)