1934(昭和9)年3月21日に発生し、2166人の尊い命が犠牲となった函館大火の発生から丸84年を迎えた21日、殉難者85回忌慰霊法要(函館市佛教会主催)が市慰霊堂(大森町33)で静粛に執り行われた。遺族などの一般参列者や消防関係者ら約40人が参列して犠牲者に哀悼の意をささげるとともに、大惨事を後世に伝え続けていく思いを新たにした。
函館大火は、34年3月21日の午後6時53分、住吉町の一角から出火。最大瞬間風速30メートル以上の強風にあおられて火はたちまち市中を駆け巡り、延々約11時間に渡って燃え続けた。全市の約3分の1を焼き尽くし、翌22日午前6時に鎮火した。罹災人口は10万2001人、2万2667世帯が被災し、重症者は2318人、軽傷者は7167人に上った。
函館は地形の関係から風が強く、幾度も大火に見舞われた歴史がある。1907(明治40)年の大火では石川啄木も影響を受け、職を求めて再び旅に出ている。慰霊堂には、身元不明で引き取り手のなかった679人の遺骨が祭られている。
慰霊法要では、市内各宗派の住職らで組織する市佛教会(岡眞行会長)の僧侶が読経する中、参列者が焼香し、祭壇前で手を合わせて冥福を祈った。30年近く毎年参列しているという西村信義さん(71)は「当時の被害の状況はよく話を聞いている。大惨事が二度とないよう祈りたい」と話していた。(木村京子)