函館水産高校(三ツ石茂之校長)は、道の実習船「北鳳(ほくほう)丸」(664トン)での長期乗船実習を今年も行う。昨年の実習で、乗船していた男子生徒1人がハワイ沖で行方不明になったが「教育課程上、必要な実習」(道教委)として継続を決めた。29日に函館港を出港する。
乗船するのは、海洋技術科海技コース22人、機関工学科機関コース16人の2年生38人と教員4人。中部太平洋で、まぐろはえ縄漁をはじめ、生物資源調査、海洋観測、船舶運航の実技、国際理解教育の研修などもプログラムに組み込まれている。3月12日に函館港へ帰港予定。
事故は昨年2月、ハワイ沖を航行中の同船で、男子生徒が深夜に船内からデッキに出て、海に転落したとみられる。行方が分からなくなり、米沿岸警備隊が捜索したほか、日本から各地の水産高校の実習船も駆け付け、周辺を捜索したが男子生徒は見つかっていない。
問題を受け、道教委は実習船の安全対策を強化。所有する北鳳丸と若竹丸(666トン)の甲板につながるドア4カ所に、開くと自動的に音が鳴る警報器と、甲板部を照らす投光器を設置した。乗組員や指導教官の安全管理マニュアルも作り、これらの内容を乗組員らに徹底するための研修も開いた。道教委は「航海そのものが危険ではないので、昨年同様に実習を行う」と説明する。新たな安全対策を講じた両船での実習で問題は起きていない。
三ツ石校長は、保護者への説明会でも実習の実施に異論はなく「実習は、高校の学習指導要領に沿った取り組み。安全対策には万全を期し、乗船の意思や目的を持った生徒の学習を支援していく」としている。(山崎大和、稲船優香)