昨年4月に市内で親子3人が車ではねられる殺人未遂事件が発生したのを受け、函館市は不審者などから子どもの身を守る方法を知ってもらおうと、保育園や幼稚園職員を対象とした暴力対策の出前講座を実施している。市子ども未来部子どもサービス課が護身術の実技指導や、将来的に暴力行為を起こさない子どもの育て方などを教え、幼児との関わりが深い保育士らのスキルアップに寄与している。
同課は以前から各施設の研修会などに出向き、子育てに関する説明会などを開いている。昨年12月から施設側の依頼に応じ、護身術や不審者対策の専用器具の使い方などを教える実技指導を行う。講師は暴力防止に関する取り組みの経験がある、柴田成同課長が務める。
市が出前講座に踏み切る契機となった昨年4月の事件では、富岡町の市道で、市内無職の男(起訴済み)の運転する軽乗用車が歩道の父親、長女、長男の親子3人をはねた後、親子を助けようとした市民に暴行を加えた。現場前の保育園に勤務する女性保育士は、長女を抱きかかえてかばい、園内に運んだ後、施錠するなどして保護した。
講座を依頼する施設は増えており、15日には富岡町1の太陽の子幼稚園(芝西佳子園長)で実施。職員26人が参加し、室内外で不審者に遭遇した場合の対応の仕方や、柴田課長の実演による護身術などを学んだ。特徴的なのは実技を教えるだけでなく、人格形成に重要な幼児期からの適切な子育ての仕方を伝える点で、柴田課長は「子どもは愛され、ほめられて育つ。楽しみながら受講してもらい、護身術や子育てのポイントをしっかりと覚えてもらいたい」と説明する。
芝西園長は「常々危機管理の意識は持っているが、新鮮な気持ちで受講できた。女性の多い職場だが、子育ての重要な役割である暴力対策の訓練を大事にしていきたい」と話していた。
同課は本年度中も数件講座を予定しており、随時依頼を受け付けている。(蝦名達也)