松前町出身の書道家金子鷗亭(1906~2001年)の生誕110年記念の特別展「金子鷗亭の世界」が8日、開館30周年を迎えた道立函館美術館(五稜郭町)で開幕した。「近代詩文書」を確立するまでの若き日の作品から、生涯にわたり書の在り方を追い求めた晩年までの約130点の作品で、95年の生涯とその書業を振り返る。
同館や函館市、松前町所蔵の作品が一堂に会した。鷗亭は漢字、ひらがな、カタカナの調和を重視し、近代詩文書を提唱。晩年まで多くの文学作品を書の題材として、作品を残した。
全国から多くの書道関係者が集まったオープニングセレモニーには、前田一男衆院議員、石山英雄松前町長らも姿を見せた。堤邦雄館長は「鷗亭先生からは、開館時に自身の代表作や、東洋美術品のコレクションを寄贈いただいた。先生の書の世界に触れていただきたい」とあいさつ。
鷗亭が立ち上げた創玄書道会の室井玄聳(げんしょう)理事長は「書を本格的に収蔵し、展示するという函館美術館の考えに共鳴し、自らの作品を寄贈した。(展示室で)先生がお待ちなので皆さんと同じ時間を共有したい」と述べた。
開場後は創玄書道会の石飛博光会長が「伝統を大事にしながら新しい命を吹き込んだ」などと作品を紹介し、会場の書道家らも鑑賞のポイントや鷗亭とのエピソードを披露した。
12月11日まで。観覧料は一般610円、高校・大学生410円、小・中学生200円。月曜休館(10月10日、11月7日は除く。今月11日は休館)。問い合わせは同館(0138・56・6311)へ。(今井正一)