国内44番目、道内で4番目となる「道南ドクターヘリ」が2月に運航を始め、16日で半年を迎えた医師と看護師が重篤患者の発生現場に駆け付け、素早い初期治療を目指して空を駆け巡っており、7月末までの出動は120件当初想定を3割ほど下回るが、函館市内から約140キロ離れた奥尻町など遠隔地からの搬送時間短縮を可能にするなど、消防との連携を深め順調な運航を続けている関係機関は今後半年間の結果を検証し、冬場の広域救急医療体制の充実を目指す
同ヘリは渡島・桧山管内の18市町や医療機関でつくる運航調整委員会(浅井康文委員長)が導入市立函館病院を基地病院とし、函館空港の格納庫を借りて運航している鹿児島国際航空(鹿児島)が運航を受託し、他機種よりもスペースが広い7人乗りの機材を導入故障や年1回の定期点検に備えて、本機とスピードの変わらない代替機を配備した
就航から7月末までの要請件数は151件で、実際の出動は120件年間の出動想定件数は366件(1日1件以上)だが「消防側が要請の基準を把握しきれていないことから、初年度は全国的に出動が少ない」(同社)とする同ヘリは空港から向かう「基地発進方式」を採用し、格納庫に常駐する医師と看護師、操縦士、整備士らが要請を受け次第、すぐに出動できるのが強みだ
出動した市町を地域別に見ると、松前町と北斗市が17件と最多続いて森町14件、木古内町と函館市が各10件となったせたな町と奥尻町はそれぞれ4件だった
初出動は2月18日で、森町に向かった悪天候のため恵山地区を迂回(うかい)したが、救急車で片道40~45分かかるところを45分ほどで同病院への搬送を完了したまた、6月4日に木古内町で発生した橋からの転落事故の際も迅速に治療につなぎ、ドクターヘリの機動性を実証した同社の榎田和也専務は「就航前に積み重ねてきたさまざまな訓練が生き、大きなトラブルもなく運航できている」と語る
同ヘリには年間3分の2が同病院、3分の1は道南圏の13病院と札幌医大から派遣された医師、看護師が交代で搭乗する現在搭乗登録をしているのは38人で、このうち6人が同病院の救急専門医札幌医大は月6日医師を派遣しているが、10月からは月4日に減少する地元病院の負担増が見込まれるが、同委事務局は「地元の医師は非常に協力的で、搭乗したいとの声が多く上がっている」といい、道南圏の一層の医療体制強化に期待がかかる
ただ、これから本格的な冬期間の運航を迎えるに当たり、救急車と落ち合う着陸地点「ランデブーポイント」の除雪作業などが必要となる道南圏のランデブーポイントは現在、公園広場や学校のグラウンドなどを中心に291カ所あるが、学校グラウンドなどは冬期間除雪されていないため、状況に応じて着陸地点を変更する可能性がある道南ドクターヘリ事務局は「消防をはじめ、関係部局と協力してポイントを増やしたり搬送方法を考えたりしていかなければ」と気を引き締める
同委は今後、就航1年の結果を検証する部会を立ち上げ、効果的な活用方法などを固める予定同委事務局は「要請基準の共有に生かしたい」としており、出動件数の増加を見据えた体制づくりに努める(蝦名達也)