【江差】町内で唯一、自転車でスルメイカの行商に励む杉野悦男さん(90)=姥神町=の“操業”が4日、始まった「イガ、イガ」と声を張り上げるスタイルは半世紀変わらず、江差の夏の風物詩90歳を機に引退宣言していたが「お客さんは少ないけど、イカを待っている人がいるから頑張る今朝は調子が良くて上り坂も自転車で大丈夫だったこれで自信がついたよ」と現役続行の構えだ
杉野さんは江差生まれで、行商は20代後半に両親の水産加工業の足しにと始めたのがきっかけだ10年ほど前に73歳で亡くなった妻のサダさんと一緒に早朝のイカ売り、昼間もホッケやスケトウダラをリヤカーに積み、砂利道の中を厚沢部町まで売り歩いて家族の生計を立ててきた
現在はホッケのすり身づくりもしながら、自宅近くの港で新鮮なイカを見極め「本当に生きのいいものが手に入らなければその日は休む」と一切妥協しない
イカ漁の時期になると船が漁港に帰ってくる度に足を運ぶという今季は悪天候と不漁で、行商の開始が2~3週間ずれ込んだ
4日は午前3時半から漁港で品定めし「お客さんが待っているし、(自分の体も)動かしたいから」と杉野さん氷詰めの発泡スチロール3箱にイカを並べて自転車の荷台に積み、同6時半に旧JR江差駅前を出発前かごのマイクスピーカーに電源を入れたが「昨日、チェックしたときスイッチをつけたままだったから、今朝電池が切れていただから今日は地声でやった」と笑う
杉野さんの行商を毎年心待ちにする町民も多く、この日も玄関先で手を挙げて呼ぶ姿があった「本当にイカを買う人が少なくなったけど、小遣い稼ぎに今年も頑張るべさ」ときっぱり杉野さんの行商は11月ごろまで続く(田中陽介)