新型コロナウイルスの影響で休校が続く中、函館北中学校(奥崎敏之校長、生徒223人)が授業を撮影した動画の配信を始めた。函館市教委によると、市立の小中学校での動画教材の配信は初めて。生徒や保護者の不安を和らげるべく、教員が新たな学びの形を探っている。(稲船優香)
休校中の4月下旬にホームページを開設。これをベースに、動画投稿サイト「ユーチューブ」や、配信を発案した奥崎校長が持つサーバーを組み合わせ、4月30日に公開した。
配信に先立ち、生徒全員のネット環境を調査。8~9割がスマートフォンやパソコンを使って自宅で視聴できると分かった。また、改正著作権法が同28日に施行されたことも追い風に。教育委員会など学校の設置者が補償金を指定管理団体に支払えば、教科書などの著作物を著作権者の許諾なく遠隔授業で利用できるようになった。コロナ対策として、同協会は今年度に限り補償金を無償にしている。
主要5教科の担当教員を中心に5~10分にまとめて撮影。教科書に基づいた解説やオリジナルのプリントを用いた授業などを配信し、英語では音楽教員が演奏した校歌に乗せて単語の発音練習をするなど楽しく学べる内容も。生徒からは「先生の顔が見られてうれしい」などの声が寄せられている。
奥崎校長は「実験が主な理科といった対面での指導が望まれる教科もある。機材や教材の中身、著作物の取り扱いなど初めてで大変だった」と振り返り「年度初めは前学年の復習はできるが、配布した課題で独自に予習するのは難しい。折れそうな心を前へ向け、新しい部分を学べるようにしたい」と意気込む。
視聴環境がない生徒には、パソコンやDVDを貸し出す。今後は双方向授業に拡充することも考えている。田中努主幹教諭は「全ての子どもの学びを保障するのが前提。生徒を取り残すことがないようにしたい」と話す。