函館市美原3で写真館を営む谷杉アキラさん(49)がこのほど、写真集「PIRKANOKA(ピリカノカ)」を出版した。道内各地のアイヌ語に由来する地名をたどり、北海道の原風景を1冊にまとめている。
谷杉さんの店は、道内に写真術を伝えた田本研造(1832~1912年)が興した写真館をルーツに持つ。田本がアイヌ民族にレンズを向けていたことから、アイヌ文化の研究を進める中で写真集を企画。7年間かけてアイヌ語由来の地を訪ね歩き、写真を撮りためた。
「ピリカノカ」はアイヌ語で「美しい形」の意味。襟裳岬や十勝幌尻岳、カムイチャシ(後志管内豊浦町)など、国指定名勝として保護されている10カ所のほかに、アイヌ語由来の景勝地を撮影。原風景を残すため、人工物を写し込まないようアングルに細心の注意を払っており、中でも城岱牧場(七飯町)から函館山を撮影した1枚は、海霧の発生を見計らい、山頂の電波塔が隠れた状態を収めた。「何百枚撮った中で、ようやく撮れた1枚」(谷杉さん)という。
探検家・松浦武四郎によって「北海道」と名付けられてから来年で150周年を迎えることにもちなんで出版。谷杉さんは「古里の歴史や景観、文化を思い起こして愛着を深めてほしい」と話している。
A5判128ページ、3000円(税別)。谷杉さんの店「写楽館」などで販売している。問い合わせは同店(0138・46・4554)へ。(千葉卓陽)