函館市在住で道南落語倶楽部所属の講釈師、荒到夢形さん(56)が毎月第4日曜に、元町30のカフェやまじょうで開いている寄席「黄昏講談会」が、9月25日で丸3年を迎える。夢形さんは「ここまで続けてこられたのは、支えてくださった方々のおかげ」と感謝。会場のオーナー太田誠一さん(63)は「道南の郷土史や人物伝を面白おかしく語る機会があることは街の再発見につながる。これからもアシストしたい」とエールを送る。
2人は2011年ごろ、共通の知人を介して出会った。同店の常連客となっていた夢形さんが発表の機会を模索していた13年夏ごろ、太田さんがカフェでの講談会を提案。「黄昏講談会」が誕生した。
夢形さんの講談はすべて自作。人物や歴史を紹介するために、自ら現地へ行って取材を怠らない。「講釈師 見てきたような 嘘をつき」という昔からの言葉があるが、夢形さんは「面白くするために演出することはある」としながらも、史実をおろそかにすることなく話を組み立てている。また、会に集まる顔ぶれに常連客も多いことから、常に新作をかけるよう心掛けているともいい、「甘えそうな自分を戒め、追い込む場にもなっている」と話す。
35回目となった28日は、30回以来の「夢」の共演となる師匠の落語家、東家夢助さんがゲスト出演。夢助さんは夏の定番といえる古典落語「青菜」を披露し、聴衆の笑いを誘った。
夢形さんは、昭和期の社会人野球チーム「函館太洋倶楽部」で捕手として活躍した久慈次郎の人物伝を披露。3部作の2部として、選手時代の活躍と函館大火直後の境遇を描いた。
初回から応援している市内の藤井和子さん(88)は、友人4人と毎回訪れているという。「身近な人物や道南の懐かしい地名に親しみがわく。思い出を振り返る懐かしい機会になっている」と話した。
師匠の夢助さんは3年間続けてきた講談会を振り返り「太田さんの心意気と夢形さんの情熱が、多くの人に伝わった成果だ」と目を細める。夢形さんは「いつまでも続けていけるように前回より今回、今回より次回を見据え、頑張りたい」と前を向く。
次回の開催は9月25日午後4時から。(半澤孝平)