免疫チェックポイント
阻害剤と腫瘍内科医
みなさんは「腫瘍内科」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ここで言う腫瘍とは悪性腫瘍、いわゆる「がん」を指します。がんはその種類や進行度に応じて、手術、放射線治療、薬物療法など、さまざまな治療が必要になりますが、腫瘍内科医はその中でも薬物療法(抗がん剤治療)を行います…。このような書き出しで前回ドクターコラムを執筆させていただいてから丸6年が経ちました。この6年間で抗がん剤治療の分野において最も変わった点は、免疫チェックポイント阻害剤が非常に多くのがん種で使用されるようになったことだと思います。
免疫チェックポイント阻害剤とは、薬の力でがん細胞を攻撃する従来の抗がん剤とは異なり、薬を投与された方の免疫細胞を活発化させることでがんと闘うという今までとは全く違うタイプの抗がん剤です。この治療の開発に貢献した本庶佑先生は2018年にノーベル医学生理学賞を受賞されています。現在日本で使用できる免疫チェックポイント阻害剤はまだ数種類ですが、今後も次々と新薬が発売され、今まで使用できなかったがん種にも投与可能となる見込みです。
しかしこの全く新しいタイプの抗がん剤は、今までの薬では考えられなかったような新しい副作用をきたすことも知られています。さらに同じ副作用であっても従来の薬と対応が異なる場合もあります。例えば抗がん剤の副作用で下痢になってしまった方を治療する場合、同じ下痢でも使用している抗がん剤によっては治療法を変えなければならないのです。このようなことができるには薬剤ごとに十分な理解と経験が必要であるため、抗がん剤の専門家である腫瘍内科医の出番は年々増え続けています。ただ抗がん剤治療の専門医資格を持つ「がん薬物療法専門医」はまだまだ少なく、2022年現在北海道内には65名しかいません。そのため新薬の開発と同じくらい専門医の育成も重要と考えられています。
(ハコラク 2022年11月号掲載)
略歴
平成19年、弘前大学医学部医学科卒業後、札幌北楡病院、函館中央病院、国立がん研究センター中央病院で勤務。平成24年、順天堂大学大学院医学研究科に入学し、平成28年に卒業。同年、函館中央病院腫瘍内科科長兼外来化学療法センター長に就任。日本消化器病学会消化器病専門医。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。
函館中央病院
函館市本町33-2
☎0138-52-1231(代)
http://www.chubyou.com/
■診療科目/糖尿病・内分泌内科、消化器内科、腫瘍内科、循環器内科
小児科、外科、整形外科、形成外科、脳神経外科
心臓血管外科、皮膚科、産婦人科、耳鼻咽喉科
歯科口腔外科など、全26科目
■受付時間/ 8:30~11:30
13:30~16:00
※土曜は午前のみ。診療科や時間帯によっては要予約。
■休診日/日曜・祝日・年末年始