ワクチンはまだ見ぬ子の命をも守ってくれる
平成25年に風疹の流行が関東を中心にみられたときに、45人の先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれました。症状は多岐に渡りますが、過半数のお子さんに難聴や先天性心疾患が認められました。11人のお子さんはほぼ6カ月までの間に先天性心疾患が原因で亡くなりました。7人のお子さんには知的な遅れを認めています。
ワクチン接種歴のある母親は11人おられましたが、子供の症状の発症を抑えることができませんでした。
こんな悲しいことは二度と起こってほしくはありませんが、残念ながら、昨年から風疹の流行が再度あり、すでに1人の先天性風疹症候群のお子さんが報告されています。そのお母さんは充分な風疹への免疫があったにもかかわらず、流行があったが故に大切なお子さんに病気が発症してしまいました。
政府はようやく重い腰を上げ、風疹に対する免疫が低いと考えられる昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性に風疹に対する免疫の状態を確認して、免疫の低い人には、麻しん風疹混合ワクチン(MRワクチン)を3年間無料で行うことを決めました。会社の健康診断や市町村の健康診断の時に風疹の免疫の状態を調べ、免疫の低い人にはワクチンをするという流れになります。MRワクチンを使用するのは、風疹単独ワクチンの流通量が少ないためです。
先天性風疹症候群のお子さんが生まれないようにするには、お母さんの免疫の状態も大切ですが、流行そのものを阻止する必要があります。自分は結婚していないから、結婚してももう子供は作らないからとワクチン接種に懐疑的になる方も多くいると思います。でも、風疹の流行を抑えるためにはそんなあなたの協力が不可欠なのです。なぜなら、どんなに注意しても風疹の流行がなくならない限り、先天性風疹症候群の発生は防げないからです。
(ハコラク 2019年6月号掲載)
略歴
昭和61年、北里大学医学部卒業。北海道大学病院小児科、市立函館保健所、函館共愛会病院小児科などの勤務を経て、平成15年11月、かみいそこどもクリニックを開院。日本小児科学会小児科専門医。北海道子どもの虐待防止協会道南支部代表も務める。
かみいそこどもクリニック
北斗市中央2-4-3 ☎0138-74-2611
http://www.kamiisokodomo.com/
■診療科目/小児科
■診療時間/月・火・木・金9:00~12:00、14:30~18:30 水9:00~12:30 土9:00~13:00
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