歩くことと健康寿命
健康寿命とは、平均寿命のうち健康で活動的に暮らせる期間のことです。平成28年のデータでは男性72・14歳(80・09歳)、女性74・79歳(87・14歳)となっています(カッコ内は平均寿命)。この健康寿命を延ばすためには、歩くことが最も重要です。歩行で全身の筋肉の70~80%が使われますので、肥満防止・予防、動脈硬化の改善、血圧の正常化、骨粗鬆症の予防、老化の予防などの効果があります。
歩行を阻害する状態として間欠跛行があります。この間欠跛行は歩行により下肢の痛み・しびれ・脱力などで歩行困難となりますが、しばらく休息すると症状が改善し、再び歩行可能になるという現象です。なぜ間欠跛行が問題になるかというと、日常生活で歩くことが面倒になり健康寿命に影響を与えるからです。
間欠跛行を起こす代表的な病気として、腰部脊柱管狭窄症と末梢動脈疾患の2つがあります。いずれも主に高齢者の方が罹患されます。整形外科は腰部脊柱管狭窄症を治療しています。
腰部脊柱管狭窄症の治療は、軽症の場合は保存療法(薬物療法、神経ブロック療法など)を行います。間欠跛行が改善し日常生活の制限が少なくなれば問題はありません。最近、さまざまな治療薬が出てきて、保存療法が奏功する患者さんも増えてきました。しかし、保存療法の効果がなくなり重症化すると、間欠跛行が改善せず、下肢の麻痺、排尿障害も出てきます。そのような場合は手術が必要となります。ひと昔前は80歳程度で手術はやらないという意見もありましたが、現在では併存症の少ない元気で意欲的な超高齢(85歳以上)の患者さんも手術するようになっています。多くの患者さんは歩行を再獲得でき元気に生活されています。
間欠跛行があると思い当たる高齢者の皆さん、一度、整形外科専門医を受診されてはいかがでしょうか?
(ハコラク 2019年5月号掲載)
略歴
昭和60年、弘前大学医学部卒業後、同大学大学院に進み、国立療養所岩木病院整形外科、大館市立総合病院整形外科、弘前記念病院整形外科、国立弘前大学付属病院整形外科勤務を経て、平成6年、市立函館病院、平成30年、同院副院長に就任。日本整形外科学会整形外科専門医。
市立函館病院
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