NASH(非アルコール性脂肪肝炎)と肝がんのリスク
最近、テレビや新聞でもよく取り上げられる話題の疾患のひとつにNASH(非アルコール性脂肪肝炎)があります。アルコールを摂取していなくても脂肪肝を呈し、進行すると肝硬変、さらには肝がんにまで進展するというもので、最近はNASHによる肝がんの症例が多く見受けられるようになってきています。食生活の変化、運動不足などに伴う肥満の増加が大きな原因なのですが、肥満により発症する単純な脂肪肝が、脂肪肝炎(NASH)を呈し、肝硬変、肝がんへと進展するには、肝臓の線維化が重要なポイントであることが分かってきました。そして、その線維化には、いくつかの要因が関係しているのですが、その中でも糖尿病に伴う高血糖状態が大きく関与していることも分かってきています。つまり、糖尿病を合併した肥満の人は、単純な脂肪肝から、NASH、さらには肝硬変、肝がんへと進展するリスクがとても高いのです。
初期の脂肪肝は、軽度の肝機能異常、例えばAST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPの上昇を示すことで疑われる症例が多いのですが、画像診断(腹部エコー、CTスキャン)で容易に診断することができます。一方、NASHの診断は難しく、肝生検での病理診断が必要なのですが、肝生検をしなくても、高度の脂肪肝を呈し、肝の線維化マーカーが高いことや病歴、病状からNASHと診断できる症例が多くなってきています。肝の線維化マーカーにはFib-4インデックス、M2BPなど、有用な指標が使用できるようになり、肝硬変、肝がんへ進展するリスクの高い人が、ある程度予測できるようにもなっており、早期の対応が可能となっています。
肝機能異常を伴う糖尿病(高血糖)の患者さんは、NASHの可能性も考慮し、掛かり付け医に相談されることをお勧めします。
(ハコラク 2018年9月号掲載)
略歴
昭和56年、札幌医科大学卒業。札幌医科大学附属病院第一内科、札幌慈啓会病院、函館五稜郭病院消化器内科、医療法人社団官尾医院勤務を経て、平成17年、平田博巳内科クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。平成3年、第4回日本内科学会奨励賞受賞。
平田博巳内科クリニック
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