当帰芍薬散について
当帰芍薬散がよく効く女性の共通点は、色白・やせ型・なで肩で冷え性の一見虚弱タイプ。昔から当芍美人と呼ばれたりもします。竹久夢二の絵に出てくる女性をイメージするとぴったりです。竹久夢二の絵のモデルはお葉さんですが、彦乃、たまき、カタなど以前に愛した女性の面影を隠すように絵に忍ばせており興味深いです。夢二は一人の女性では収まり切れない情熱家だったようで、愛した女性の共通点は「妖精のような可憐さと成熟した魔性をあわせもった」と表現されています。
このような女性は一見はかなく、虚弱そうに見え、男性の保護本能をそそりますが、実は良い意味で強靭なしたたかさと芯の強さを持っています。医学的には低血圧・冷え性で弱そうに見えますが、血管がしなやかで動脈硬化が起こりにくく、総じて長命です。
細身色白でみずみずしく、しっとりと潤った肌、体水分量が多めなので水も滴る佳い女、調子を悪くすると隠れむくみになりやすいです。内耳に隠れむくみが及ぶと頭痛、めまい、立ち眩みを起こします。このような隠れむくみ状態を漢方では水毒と呼んでいます。
冷えや貧血感を放置すると生理不順や生理痛なども起こしやすいです。漢方ではこのような状態を血虚と呼んでいます。西洋医学の貧血に近い概念ですが、貧血よりも貧血の結果組織に栄養が行き渡らない状態を指します。
すなわち夢二の絵に出てくるような当芍美人は、血虚と水毒を起こしやすいのです。
当帰芍薬散は2組の生薬群からなる処方、1つは当帰・芍薬・川芎で体の組織を養い暖め血虚に対する薬効があります。もう1つは茯苓、沢瀉、朮と水の巡りをよくし水毒に対する薬効があります。
夢二の絵に描かれているような、素敵な女性は冷え、頭痛、めまい、立ち眩み、生理不順、生理痛などに悩まされやすいのですが、当帰芍薬散で体調を整え、したたかな魔性を発揮されて、我々男性を悩ませていただけることを祈念いたします。
(ハコラク 2019年3月号掲載)
略歴
昭和50年、札幌医科大学卒業。昭和60年に医学博士学位取得後、同年より市立室蘭総合病院産婦人科科長に就任。昭和62年より、秋山記念病院副院長に就任。専門分野は婦人科心身症、東洋医学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本東洋医学会漢方専門医。
秋山記念病院
函館市石川町41-9 ☎0138-46-6660(代) http://akiyama.hakodate.jp/
■診療科目/産科、婦人科、乳腺外科
■診療時間/〈産科・婦人科〉月・火・木・金 9:00~12:00、
15:00~18:00
水 9:00~12:00、
土 9:00~14:00、
日・ 祝9:30~12:00
〈乳腺外科〉(予約制) 月・火・木 9:00~11:40、
14:00~16:40、水・金 9:00~11:40