変形性膝関節症の治療
膝が痛くなる原因はさまざまですが、特に中年以降の女性を悩ます病気に変形性膝関節症があります。これは主に加齢による下肢筋力低下や体重増加で、関節内のクッションである軟骨が擦り減ったりして消失し、最終的には骨の変形が加速度的に進んで、立ち上がることも困難になる関節疾患です。現在の国内患者数は軽症も含めて2500万人以上と推定され、60歳以上では約6割が罹患しているとも言われ、高齢化が進むにつれ患者数はますます増加傾向にあります。
軽症の段階では鎮痛剤や湿布が有効な場合が多く、下肢の筋力強化訓練や減量により病態の進行を抑えることが可能ですが、症状の進展に従い摩耗した軟骨を保護し荷重刺激による疼痛を緩和するために、ヒアルロン酸製剤の関節注射も併用します。さらに変形が進んで日常生活動作に支障が生じるようになると、人工関節手術の適応となります。本手術は周到な術前計画に基づき、精密に関節内の骨を削ってインプラントを設置することにより、適正な下肢アライメントを再獲得して疼痛のない歩行を可能とします。これは人工膝関節置換術(TKA)と言い、進行した変形性膝関節症に対しては極めて有効かつ唯一とも言える治療法ですが、侵襲度も大きく、術後のインプラント感染に対しては終生に渡り日常的な注意が必要となります。
最近ではほかに自分の血液で作ったクスリを関節内に注入して、症状を軽減させる治療も実用化されています。血液中の血小板に含まれる各種成長因子には、損傷した軟骨や靭帯などの組織の修復を促し、炎症を鎮静化する作用があることが知られ、患者さんから採血した血液から、これらの成分を抽出・凝縮・粉末製剤化したものを関節内に注射します。効果には個人差がありますが、おおむね満足度は高いようです。しかし、現時点では保険適応が無く、実施可能な医療機関も限られていますので注意が必要です。
(ハコラク 2023年3月号掲載)
略歴
平成13年、滋賀医科大学医学部医学科卒業後、京都府内などの病院勤務を経て、平成29年、函館あかまつ通り整形外科クリニック開院。日本整形外科学会整形外科専門医。
函館あかまつ通り整形外科クリニック
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☎0138-47-0007
https://www.akamatsu-seikei.com
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