より良い生活のための人工関節
自分が行っている手術の8割以上を占める、人工関節に関してお話させていただきます。よく聞かれることを中心に記載し、人工関節に対する疑問や偏見が少しでも減れば幸いに思います。まず、人工関節手術とは、変形性関節症や関節リウマチ、あるいは外傷によって傷んで変形した関節の表面を取り除き、人工の関節に置き換えて関節の痛みを軽減する手術です。手術件数は年々増加し、一般的な手術となっています。ちなみに、人工股関節は整形外科における20世紀最大の発明と言われています。
こちらに来て始めの頃はよく「人工関節にすると歩けなくなるんでしょ」と言われ、「そんな馬鹿な」と驚いた記憶があります。前述した通り、傷んで変形した関節を人工関節に置き換えて関節の痛みを軽減する手術なので、歩けなくなることなどありません。正しい適応と正確な手術手技で行えば、歩くのは当然、仕事やスポーツ(ゴルフなど)も継続できる方が多く存在します。その証拠の一つが、身体障がい者の適応の変化です。以前は人工関節置換術を受けた方は一律4級に認定されていましたが、2014年以降は関節の動きや能力に応じて認定されることとなり、現在では人工関節の手術を受けた方のほとんどが、身体障がい者の等級に該当しなくなりました。
ただ、人工関節はやれば勝手に良くなるわけではなく、リハビリが重要です。リハビリ意欲の高い方ほど、良い結果となることが多いです。あくまで主体は手術を受けられる方で、手術はそのきっかけなのです。人工関節(特にポリエチレン)が改良され、長持ちするようになったことから、50~60代の方にも、人工関節を行うことが増えました。90歳を超えるご高齢の方も、全身精査をして安全にできると判断されれば手術が可能です。
年齢やそこはかとない不安であきらめず、主治医とご相談のうえ、人工関節の利便性を享受してください。
(ハコラク 2023年3月号掲載)
略歴
平成21年、弘前大学医学部医学科卒業後、苫小牧市立病院、北海道大学病院、市立釧路総合病院、名寄市立総合病院、岩見沢市立病院勤務を経て、令和3年、函館中央病院整形外科着任と同時に人工関節センター長へ就任。日本整形外科学会整形外科専門医。
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