世界観を突き詰めた陶器の数々は緻密な計算と偶然が生み出す自然の妙技
指先に全神経を集中して感覚を研ぎ澄まし、薄く薄くろくろを引く。乾燥、素焼き、釉掛け、本焼きの過程を経て、窯から取り出された陶器は金属のような質感を持つ。「唯一無二」と「革新」をコンセプトに掲げ、釉薬、形、薄さ、軽さ、使いやすさ全てにこだわり抜いて生み出される作品の数々は、地元のマルシェ、札幌のイベント、デパートの展示即売会などで注目を集めている。
髙橋さんが初めて土に触れたのは、平成28年のこと。函館工業高等専門学校卒業後、電子部品メーカーに入社、宮城県での赴任を経て在宅勤務に切り替え帰郷、趣味になるものを始めようと陶芸家の父・貴紀さんの教室に参加したのがきっかけだった。意識が一変したのは釉薬との出合い。配合で風合いがガラリと変わる面白さに魅了された。材料の配合率を数グラム単位で変え、独自の方法で数千回実験を繰り返し、特に興味を引いたのは、釉薬の縮れが生み出すサメ肌状の器「梅華皮」。実験中の偶然の産物だというが「調べたら伝統的なものだった。それを今風に突き詰めた」と独自の技法を確立させた。
釉薬、形に向き合い2年で構築した世界観。今後は土の配合に重きを置き、さらに発展させて作品作りに取り組む。「いずれは陶芸一本で」と心を定め、新進気鋭の陶芸家としての道を歩み続ける。
(ハコラク 2019年2月号掲載)
TACERA
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