口が渇く
~唾液の役割、減少の影響・原因~
唾液の別名である「つば」「よだれ」はあまり良いイメージの言葉ではありませんが、食べ物を湿らせて飲み込みやすい形に整え、消化を助ける成分や細菌、ウイルスから身を守る成分を含み、粘膜を潤して保護するなどの重要な働きをしています。唾液は耳下腺、顎下線、舌下腺という3大唾液腺と、口腔粘膜の下にある小唾液腺で作られ、口腔内に分泌されます。
一時的な口の渇きは緊張する場面や、運動後、気温が高い日の脱水の一症状として、誰もが経験したことがあると思います。しかしこの口の渇きが慢性的に続くと口腔乾燥症という病気が疑われます。この病気は中高年の方に多く、症状は「口が渇く」だけでなく、多岐に渡ります。「食事が飲み込みづらい」「味覚がおかしくなった」「口臭が強くなった」「最近になって虫歯や歯周病が進行した」「入れ歯がこすれて痛い」「舌がひりひりする」などの原因が、実は口腔乾燥であることも珍しくありません。
口腔乾燥症は慢性的な唾液の減少が原因ですが、この病名はかなり大ざっぱなものです。シェーグレン症候群に代表される唾液腺そのものの機能低下が原因である場合だけでなく、糖尿病の一症状、普段服用している薬の副作用、常に不安やストレスを抱えている生活などによる唾液量の低下など、唾液腺以外に原因がある場合もあります。原因不明であることも多いですが、高齢という理由だけでは唾液が若干減ることはあっても、慢性的な口腔乾燥を自覚するほどの症状はまず出ませんので、症状が長引く場合は医療機関の受診をお勧めします。
唾液にちなんだ余談ですが、「年寄りの唾は糊になる」ということわざを見つけました。〝高齢になると口腔乾燥のため唾液がねばねばしてくる〟という意味かと思いましたが、正解は〝経験豊かな高齢者の言葉は貴重である〟という意味だそうです。
(ハコラク 2021年11月号掲載)
略歴
昭和61年、北海道大学歯学部卒業後、同大歯学部第一口腔外科入局。千葉県がんセンター、恵佑会札幌病院、北海道大学病院助手などを経て、平成18年、函館中央病院歯科口腔外科科長に就任。日本口腔外科学会口腔外科専門医。北海道大学非常勤講師。
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