函館市西部地区に点在する歴史的建造物の適切な維持・保全を担える人材の育成に向けた今年度の「函館伝統的建築技術研修会」が11日、市職業訓練センターで始まった。左官、建具、大工、板金の技術者計18人が参加。初回は左官職人として全国の文化財修復に尽力する中島左官(愛知県)の中島正雄会長の講演に耳を傾け、建築遺産を後世に受け継ぐための心構えなどを学んだ。
函館市市民協働モデル事業で、NPO法人はこだて街なかプロジェクト(山内一男理事長)の主催。実務経験が5年以上ある大工、板金職人に加え、今年度からは左官と建具を対象に追加し、10月24日までの全4回中に技術実習、歴史的建造物の見学などを行う。
中島さんは、市内では箱館奉行所の復元、ハリストス正教会復活聖堂保存修理なども手掛けている。約60年の職人生活を振り返り、「土はとても奥深い。失敗もあったが、研究し技術を磨いていくと必ず成功する」と断言。文化財の修復は「時が経てば壊れるのは仕方のないこと。それらを修繕し長く持たせるだけでなく、直す技術を伝えていくことも大事」と話した。その上で、「皆さんも自己研さんを積み、その土地の色が感じられる壁を仕上げていって」とアドバイスした。
参加者は講演終了後、西部地区に出掛け各所にある歴史的建造物を見学した。(小杉貴洋)