1年死亡率25%の疾患「動脈硬化症」
動脈硬化症という病気を最近よく耳にします。動脈血管の変性疾患で進行すると動脈壁の石灰化や血管内に血栓を形成し、体のさまざまな臓器に血流障害を来す疾患で、心筋梗塞や脳梗塞もこの病気が原因で発症します。一般的には加齢とともに緩やかに進行しますが、糖尿病や慢性腎不全で透析治療を受けられている方など、動脈硬化のリスクの高い方では病状が急速に進行することが知られています。下肢の動脈硬化症で最も進行した状態をCLTI(包括的高度慢性下肢虚血)と呼びますが、ここまで病状が進行すると診断を受けてから1年以内に25%の方が死亡するとの調査報告があります。さらに、足に潰瘍(1カ月以上治らない傷)や感染を伴うような状態まで病状が進行した場合は深刻で、1年以内に約30%の方が下肢切断に至ります。
このように深刻なレベルまで病状が進行してしまう要因として、動脈硬化症は病状がかなり進行するまで無症状のことが多く、重度に進行して初めて症状が出現することが少なくないからです。動脈硬化症は40~50代から始まると言われており、また、先の糖尿病や透析治療を受けられている方のほかに、喫煙歴の長い方、高血圧、高コレステロール血症で治療を受けられている方などでは動脈硬化進行のリスクが高く、動脈硬化の症状が出現する前に早期診断を受け、動脈硬化の進行レベルに応じた治療を開始する必要があります。
動脈硬化症の早期診断のための比較的簡便な検査方法としてABI(足関節上腕血圧比)測定検査があります。上肢と下肢の血圧測定を実施して、下肢の血流障害の有無や動脈硬化進行度を評価し、現在の血管年齢を推定することができます。循環器専門医のいる多くの病院で検査が受けられると思いますので、動脈硬化進行リスクに該当する方は早期診断のために検査を受けられることをおすすめいたします。
(ハコラク 2021年9月号掲載)
略歴
平成5年、旭川医科大学医学部卒業後、同大学、新日鐵室蘭総合病院、北彩都病院勤務を経て、令和3年4月、市立函館病院着任。日本外科学会外科専門医。
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