製薬会社「シオノギヘルスケア」(本社大阪、吉本悟社長)は今月、函館市と連携し、天然ガゴメコンブの保護と養殖ガゴメコンブの利用向上を目的とした「昆布の森再生プロジェクト」を発足した。経済産業省補助事業の「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業」を活用し、産官連携で道南の貴重な漁業資源であるガゴメコンブの保護と再生に取り組む。(小川俊之)
ガゴメコンブはぬめり成分のフコイダンなどが健康や美容に効果があるとされ、さまざまな製品に活用されている。しかし近年は海水温の上昇などの影響で天然物の生産量が著しく減少。そのため養殖物への切り替えが進んでいるが、収穫後に各漁業者が個人宅で1枚ずつ乾燥させなければならない工程が大きな負担となっている。
函館産のガゴメコンブを利用した製品を販売している同社は、天然資源が減少傾向にあることを憂慮し、産官連携による資源保護と利用向上を目的としたプロジェクトの推進を市に提案。今月本格的に始動した。
初年度は乾燥作業を効率的に行うための手法確立に取り組むとともに、未乾燥ガゴメコンブを冷凍保管し閑散期に乾燥させる方法を検討。さらに乾燥昆布の品質を判断する客観的指標を設定し、安心した取り引きが可能な環境を目指す。
このほど吉本社長が函館市役所を訪れ、工藤市長と同プロジェクトの進行方針などについて確認した。工藤寿樹函館市長は「ガゴメコンブについてはこれまでも、北大を中心に市や道立工業技術センター、関係企業などが協力し、さまざまな商品開発に結び付けてきた。生産量が減少している中、同プロジェクトにより安定的な資源確保と地域資源としての魅力向上が図られるほか、地域漁業者の生産力向上に寄与することも期待したい」と話している。同社の担当者は「プロジェクトを通じてノウハウを蓄積し、漁業者の高齢化や非効率化に悩む地域の活性化につなげていければ」としている。