胸部X線健診受診の秘訣
健康診断の項目として皆様にもなじみの深い胸部X線検査は、さまざまな胸部疾患の早期発見に貢献しています。当コラムではこの胸部X線検査を皆様がより高い精度で、そしてスムーズに受けていただくための秘訣について、ご紹介させていただきたいと思います。
X線は物質を透過する力の極めて強い、光の一種です。胸部X線検査はこのX線を体に直接照射し、骨や臓器間の透過性の差を利用して透視画像を撮影しています。胸部X線検査の撮影方法は、受診者の性別年齢や体格の違いに影響されることなく、心臓や肺の構成要素とこれらを取り巻く骨格が一定の配置で撮影されるように工夫されています。その理由は診断のための情報として、異常影の存在位置と既存の正常構造に及ぼした変化がとても重要であるからです。心臓の大きさや形は心疾患の指標となるため、実寸に近い形態で写るように背側から一定の高さで撮影します。また肺野を最大限にかつ明瞭に描出するためには、毛髪や装用物の写り込みを避け、肩甲骨や横隔膜と肺の重なりが最小限となる姿勢と呼吸のタイミングで撮影する必要があります。若干窮屈な体勢や、薄い上衣で撮影を行うのはこのような理由によります。
標準的な撮影姿勢のポイントは次の通りです。①両手の甲を腰骨の同じ高さに当て、指先を真後ろに向ける。②背筋を伸ばす。③手の甲を腰に当てたまま肩の力を抜き、両肩、両肘、胸、腹を撮影パネルに押し当てる。④合図に合わせて最大限に息を吸う。⑤これらの姿勢を取ることが難しい方は、撮影担当者にご遠慮なくご相談ください。
昨今の新型コロナ肺炎の流行に伴い、私たちの生活は感染予防のための一層の工夫が求められるようになりました。健診施設においても安心して受診いただけるよう、会場の密の回避や円滑な検査の進行に努めています。本日ご紹介させていただいた細やかな秘訣が、皆様のこれからの健診受診のお役に立てれば幸いです。
(ハコラク 2021年6月号掲載)
略歴
平成2年、札幌医科大学医学部卒業後、同大学附属病院、JR札幌鉄道病院、市立室蘭総合病院、函館市医師会病院、士幌町国民健康保険病院、北海道社会事業協会帯広病院などを経て、令和2年1月より西堀病院に着任。
西堀病院
函館市中道2-6-11
☎0138-52-1531
http://www.nishibori-hosp.or.jp/
■診療科目/内科、消化器内科、循環器内科、外科
整形外科、肛門内科、リハビリテーション科
■診療時間/月~金 9:00~12:30
13:30~17:00
■休診日/土・日曜・祝日