生理痛は我慢しないで
生理痛の原因には、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などの器質的疾患と、特に目に見える病変のない機能性の生理痛とがあります。機能性の生理痛でも、痛みが子宮の痙攣性の収縮をもたらし、子宮内に溜まった生理の血液がスムーズに出にくくなり内圧が高まったり、卵管から腹腔内に逆流したりする恐れがあり、さらに痛みを増し悪循環となります。その状態が続くと子宮内膜の断片が子宮筋層に食い込んだり、腹腔内に付着したりして、それらが吸収されないで増殖することがあります。それが本来の子宮内腔以外の位置に内膜が発生する子宮内膜症です。これらは逆流説という仮説ですが信ぴょう性は高いと思います。
すなわち生理痛の放置が子宮内膜症の原因になっている可能性が高いのです。よく薬に頼りたくないと思って、我慢されている方が多いのですが、こと生理痛に関しては我慢しても何も良いことはありません。我慢出来なくなってから鎮痛剤を服用するのではなく、痛みを予防する感覚で少しでも痛んだら早めに鎮痛剤を服用した方が良いのです。近年は治療用のピルもあります。避妊目的ではなく生理痛治療を目的にしたピルで、服用すると子宮内膜の増殖が抑制され、生理の量が減り痛みも大幅に軽減され、さらに子宮内膜症病巣の増殖も防ぐので根治療法にもつながります。軽症の場合は毎月生理を起こすタイプがあります。重症の場合は一定期間、例えば半年間、生理を止めるタイプがあります。子宮内に治療用リングを入れる治療もあります。5年ほどリングから微量の黄体ホルモンが放出され、子宮内膜の増殖を防ぎます。全身的にはほとんど作用せず、子宮には十分に作用します。いろいろな理由でピルが飲めない方におすすめです。生理痛の放置は子宮内膜症を引き起こし、さらには骨盤臓器の癒着や不妊の原因になったりもします。やせ我慢をすることなく、適切な治療を受けることをお勧めします。
(ハコラク 2021年5月号掲載)
略歴
昭和50年、札幌医科大学卒業。昭和60年に医学博士学位取得後、同年より市立室蘭総合病院産婦人科科長に就任。昭和62年より、秋山記念病院副院長に就任。専門分野は婦人科心身症、東洋医学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本東洋医学会漢方専門医。
秋山記念病院
函館市石川町41-9
☎0138-46-6660(代)
http://akiyama.hakodate.jp/
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