味に妥協を許さず地元の人たちにも愛される函館土産を目指す
土産文化の変化に合わせて商品作りの方針を転換
北海道産の原材料にこだわり、ロングセラーの北海道土産「北海道地図布バター飴」や地元でも人気の「北海道酪農牛乳チーズケーキ」「トラピストの丘函館チーズタルト」などの洋菓子、焼き菓子、飴菓子を製造する「昭和製 株式会社」は1967年創業の老舗。創業当初の1960年代は北海道旅行が一大ブームで、土産品も大勢の人へ配ることを前提に「安価で数が多いもの」が主流だった。1980年代のバブル景気を経て土産の在り方が高級志向へと変化。これに合わせて同社では「伝統の味は守りつつも、本当においしい商品を作ろう」と1990年代前半、2代目の故・田口修会長の旗振りで原材料を見直し、「安価で高品質な商品」へと製造方針を転換した。プレミアム商品ブランド「志濃里」では、原材料をさらに厳選し「新雪チーズケーキ」「函館なめらかプリン」といったワンランク上のスイーツも次々と開発。2006年3月に認証を受けたISO9001に基づく品質・衛生管理を徹底して安心・安全な製品作りに取り組んでいる。
カマンベール香る自慢の一品 土産品として一級品に成長
優しい焼き色が食欲をそそる「函館カマンベールチーズケーキ」は、カマンベールチーズ独特の香りや深みがしっかりと感じられるハイクオリティーな一品。しっとり濃厚な風味に仕上げるため木枠に詰めてじっくりと低温で焼き上げており、製造から60日間、常温保存が可能となっている。開発は20年ほど前、当時まだ一般的に認知度の低かったカマンベールチーズを主役に、「今までにないケーキを」と田口修会長の発案で着手。味の良さはもちろん土産品として、賞味期限中の風味を一定に保てるよう、チーズ、小麦粉などの材料の選定、生地の配合、焼き方と細かな実験を繰り返した。開発に直接携わった3代目の田口輝社長は「今までやったことのない技術だったので、焼き方にムラが出たり、単純においしくなかったりと初めは失敗だらけ。全てが手探りだった」と振り返る。1年掛かりの研究を経て完成した商品は、大阪で好評価を受けたのを皮切りに、全国各地の物産展でも評判が良く一躍人気商品に。製菓技術が進むのに合わせて原材料や製法を見直し、さらに味に磨きを掛けている。
自宅用にスーパーでも気軽に購入できるように
土産文化はさらに変化を続け、近年は自宅用にと購入する人も増加している。土産商品として道外での認知度の高さは自負しているが「地元ではまだまだ。気軽に買ってもらい家庭のおやつとして楽しんでもらいたい」と、土産店だけでなくスーパーでも販売をスタート。数年前からは、事業の充実を図ってアメリカやアジアを中心とした販路開拓にも乗り出した。日本で流通している商品からのニーズを探りつつ、現地の人が好むような新商品開発にも挑戦している。また、菓子業や経済団体、行政が連携する「函館スイーツ推進協議会」に所属し、函館をスイーツの街として盛り上げようと、さまざまなイベントへ積極的に参加し業界の底上げにも尽力。田口社長は「お菓子は嗜好品。だからこそ気に入らなければ次回はない。実際に食べた人が家族や友達にすすめたいとまた手に取ってもらえるよう、味を追求していきたい」と熱意を見せる。従業員と力を合わせてアイデアを出し合い、函館土産の定番商品として誰からも愛されるスイーツを目指し、これからもたゆまぬ努力を続けていく。
昭和製菓株式会社
函館市西桔梗町589‐39
☎0138‐50‐8080
http://www.ss-showa.com/
本社内直売コーナー9:00~17:00
土・日曜、祝日定休 P有り
ハコラク2021年1月号掲載