器質性月経困難症とは?
~婦人科特定疾患の指定を受けて~
日常生活に支障を来すような病的な生理痛を月経困難症といい治療の対象になります。原因になる疾患がある「器質性」と、疾患がない「機能性」に分類されます。原因疾患で多いのは子宮内膜症、子宮腺筋症で、一部の子宮筋腫、子宮の奇形や発育不全も原因になり得ます。子宮内膜症は本来子宮の内側にあって妊娠の場となる子宮内膜が子宮以外の部位に増殖し、その部位で月経と同時に出血を繰り返す疾患で、月経痛のほか排便時や性交時などの骨盤痛、不妊の原因にもなります。子宮腺筋症は子宮内膜が子宮の筋肉層に浸潤(食い込む)するもので、月経痛のほか子宮の増大とともに過多月経を来す場合もあります。
治療には薬物療法と手術があります。薬物療法はいずれも排卵を止める治療で、妊娠中に分泌される黄体ホルモンを用い、ホルモン的に妊娠状態を作る偽妊娠療法と、女性ホルモンを下げて一時的な閉経状態にする偽閉経療法があります。偽閉経療法は骨量の減少、更年期症状などの副作用により長期投与が出来ないため、偽妊娠療法に入る前の準備や貧血の治療、手術の準備など特殊な場合で用いることが多いです。偽妊娠療法で用いる薬剤は避妊用の低用量ピル、内容はほぼ同じですが治療用(健保適用)のLEP製剤、その副作用(頭痛、嘔気、血栓症)の原因となる女性ホルモンを除いたプロゲスチン製剤があります。妊娠を希望される方は妊娠・授乳で月経が止まることが治療になるので不妊治療を行い、偽ではない本当の妊娠を目指します。
今年度から器質性月経困難症が婦人科特定疾患の指定になりました。指定の研修を受けた医師の在籍する施設が認定を受け、治療にあたっては診療計画書を作成した上で総合的なフォローを行います。生理痛は我慢するものでも抑えるものでもなくコントロールするものになりました。お悩みの方は一度専門医にご相談ください。
(ハコラク 2020年12月号掲載)
略歴
平成元年、北海道大学医学部卒業後、北大病院(不妊症グループ)および関連病院出向。平成10年、同大学院医学研究科修了、ヒト排卵機構の研究で博士(医学)の学位取得。平成11年、函館中央病院産婦人科医長、平成20年、同科長、平成25年、産婦人科ほんどおりクリニック開院。専門分野は不妊症、生殖内分泌。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
産婦人科 ほんどおりクリニック
函館市本通1‐44‐10
(旧五稜郭ウィメンズクリニック)
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■診療科目/産科・婦人科
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