慢性閉塞性肺疾患(COPD)と 薬物療法について
落語家の桂歌丸さんが酸素吸入をしながら、講談しているのを目にしたことがある方も多いと思います。彼は慢性閉塞性肺疾患(COPD-肺気腫)の重症例です。COPDは、たばこの煙に含まれる有害物質や大気汚染(PM2.5など)に長時間曝露されることにより、肺が持続的な炎症を起こし、呼吸機能の低下を来した状態で、慢性気管支炎と肺気腫の2つの病態を含んでいます。初期の症状は痰の絡む軽い咳で、40~50歳代では坂道や階段で息切れを自覚し、60歳代では息切れの増悪、喘鳴、呼吸困難を認め、さらには肺炎・体重減少・肺がんのリスクも増大します。
診断には胸部レントゲン、胸部CTでの画像検査に加え、スパイロメトリーによる呼吸機能検査が必要で、1秒の間に吐き出せる空気の量が、最大に吐き出せる呼気量の70%以下に低下すると(1秒率の低下)、COPDと診断されます。治療でまず何よりも大切なのは禁煙することですが、呼吸器リハビリテーションさらには薬物療法もあります。
薬物療法には気管支を拡張させる抗コリン剤と、交感神経β2作動薬、キサンチン誘導体などがあり、長時間作用型抗コリン剤とβ2作動薬の吸入薬治療が主体となっており、2剤の合剤吸入薬が多く使用されます。気管支喘息を合併する症例(ACO)では、ステロイドの吸入薬も有効な例が認められており、3剤の吸入薬を使用するのが有効です。最近は3剤の合剤も発売され、1回の吸入で治療をすることができるので、治療のコンプライアンスは改善しています。急性増悪が起こるとCOPDの重症化につながることがあるため、日頃から予防に努めることが重要で、手洗いうがいに加え、インフルエンザワクチン接種や肺炎球菌ワクチン接種も推奨されています。
受動喫煙も含め、たばこの煙の曝露があり、最近息切れを自覚している方はCOPDを疑い、早めに医療機関へご相談されることをおすすめします。
(ハコラク 2020年12月号掲載)
略歴
昭和56年、札幌医科大学卒業。札幌医科大学附属病院第一内科、札幌慈啓会病院、函館五稜郭病院消化器内科、医療法人社団官尾医院勤務を経て、平成17年、平田博巳内科クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。平成3年、第4回日本内科学会奨励賞受賞。
平田博巳内科クリニック
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