函館市中央図書館は5日、今年7月に「少年と犬」で第163回直木賞を受賞した日高管内浦河町出身の作家、馳星周さんを招いた講演会を開いた。市民約140人が来場し、馳さんが生い立ちや小説家になるまでの経緯などを語った。
同館の秋の読書週間(10月27日~11月9日)に合わせたイベントの一環。馳さんは1965年生まれ。96年「不夜城」で作家デビューし、第18回吉川英治文学新人賞を受賞した。
この日は「大好きなものと出会った場所」をテーマに講演。病弱だった幼少期に祖母に本を読んでもらったことが物語との出会いだったと語り、小学校の図書室や町の図書館に通いつめ、本に親しんでいた当時を振り返り、「学生時代は都会に出れば好きな本がたくさん読めると思い、とにかく東京に行きたかった」と回顧した。
横浜市立大への進学を機に上京し、出版社勤務を経てフリーライターとして活動。収入源となっていた雑誌の廃刊を機に小説執筆に取り組み、書いたのが「不夜城」で「正直売れるとは思っていなかったが、反響は大きく、人生の転換点となった」とする。
その後、同作から直木賞には7作が候補となり、今年初受賞。「ちょうど地元の浦河に滞在中で町の人が喜んでくれ、ふるさとに恩返しができた。小説を書いてきて良かった」と喜びを語った。最後には「大好きな物語との出会いがなければ今の自分はない。本当に大好きなものに出会えたら人生は豊かになる」と強調し、講演を締めくくった。(飯尾遼太)