おいしさの追及を使命に、函館の街と共に歩み発展する
貴重な北海道食材から世界に認められる味を発信
北海道民なら〝うまいべ!食べてみれや〟というフレーズを1度は耳にしたことがあるだろう。テレビCMでおなじみの「函館タナベ食品」は、2004年に設立された食品メーカー。国内に流通するタラコや明太子の97%が輸入原卵に頼る中、北海道近海で取れる貴重なスケトウダラの卵を生の状態から塩漬けして製造販売。もうひとつの看板商品「海鮮しゅうまい三昧」は、石臼を使って仕上げるスケトウダラのすり身を、イカソーメンをイメージした特徴的な刻み皮で包むことで、適度な弾力とふんわりとした食感を楽しめる逸品に仕上げる。水産加工メーカーが数多く存在する函館でゼロからのスタートを切った同社は、ブランド力向上にも力を注ぎ、ベルギーに本部を構える国際食品品評機関「モンドセレクション」に毎年商品を出品。新聞で受賞が報じられると、各地のバイヤーから北海道物産展の出店依頼が相次ぎ、その人気は全国区となり、「いかしゅうまい」「かにしゅうまい」「帆立しゅうまい」3品揃っての最高金賞獲得は11年連続を記録する。
道外から来たからこそ見える函館ブランドの持つ力
東京を中心に食品メーカーの営業一筋に35年歩んできた田邉社長は、「道内の人ほど地元の良さを知らないことがある。百貨店で開催される北海道物産展には水産、畜産、農業、スイーツとあらゆるジャンルのグルメが揃い、内地での人気は常に1位。道内の中でも函館は観光グルメ都市として全国で通用する産地ブランド」と会社設立にこの地を選んだ。〝イカの街・函館〟の特色を生かそうと、約1年半の開発期間を経て作り上げた「いかしゅうまい」は、生地に練り込む真イカをはじめ、鶏卵、タマネギ、しゅうまいの皮の原料まで北海道産にこだわり、八雲町熊石産海洋深層水から釜炊きされた塩を使用、特製付けダレには日高町産コンブを取り入れた。「たとえ高価でも地元の食材でおいしくなるなら使いたい。きちんとした商売をして、商品の魅力がPRできれば、利益は後からついてくる」という信念を貫き、2008年には「攻めの経営」「安定的な企業経営」「地域経済・社会への貢献」の3条件を満たす「北海道チャレンジ企業」の創業部門で唯一の食品メーカーとして選出された。
成長を支えてくれた地元に本物の味で恩返しを
タラコや明太子作りでは新鮮な魚卵ならではの粒立った食感を確保するため、担当者が産地工場に張り付き2カ月近く水揚げを待つこともあるほど、製造現場には徹底して〝本物の味〟を守る姿勢が息づく。機械化可能な工程にも手作業を残すなど、工場では一つひとつ目視による細やかな品質チェックが重視され、味・見栄え共に揃った商品へのこだわりは、結果的に雇用保持にも結びついたという。年々厳しさを増す「モンドセレクション」の審査基準をクリアし、2019年の商品も最高金賞を獲得したが、「信用を失くすのは一瞬。量より質が求められる時代に、おいしさを追及するのは食品メーカーの使命」と品質改善の手を緩めることはない。客、従業員、取引先、地域の人々…三方良しの精神で、相手の心を〝想う〟経営を大切にしてきた田邉社長は、「こんなにも良い街が観光の通過点になってはもったいない」と宿泊したくなる仕掛けやイベントを考えるなど、地域の盛り上げにも尽力。〝北海道のうまい!を函館から〟という創業からの思いは、成長の礎を与えてくれた函館への感謝と共に大きく膨らんでいる。
函館タナベ食品株式会社
函館市桔梗5‐28‐17
☎0138‐47‐2323
9:00~17:00
土・日曜定休
P有り
ハコラク2020年3月号掲載