地域の力が結集し生まれた味 その魅力をより多くの人々へ
地場食材の底力を国内外に発信
横津岳山麓の伏流水と独自の製法で作り続ける「函館だるま納豆」シリーズをはじめ、10種類以上の納豆を製造販売する「だるま食品本舗」。納豆のほか、モヤシ、コンニャク、カット野菜や山菜の製造販売なども手掛け、1951年の創業以来、地元の食卓を支える食品加工メーカーへと発展を遂げてきた。近年ではより地域性の高い商品開発に力を注ぐべく、地場の良質な素材に着目。芳醇でコクのある味わいに〝豆の貴婦人〟とも呼ばれる道産ブランド「鶴の子」やみずみずしい味わいの乙部町の特産「大莢白乙女」、見た目が美しく甘味が強い「とよまさり」といった、北海道が誇るこだわりの高級大豆を使った納豆作りを行うなど、長年築いたノウハウを生かして商品を展開。また、商談会などに積極的に参加することで道外にもファンを増やしており、世界的な広がりを見せる和食ブームの波に乗り、海外にも販路を拡大。地元で親しまれる食材の魅力をグローバルに発信している。
超大粒大豆「たまふくら」 産学官の連携で商品化へ
工藤哲也社長が特に力を入れ取り組んできた素材が超大粒大豆「たまふくら」。高級黒大豆「新丹波黒」と白目極大粒大豆「ツルムスメ」を交配し、2007年に誕生した新品種で、育種を進めていた道立中央農業試験場からの依頼で加工適性試験を行ったのがこの大豆との出合いだった。一般的に品種改良は収穫量の増加や冷害などに強くするため行われるが、「たまふくら」はその食味の良さから品種化した大豆。大粒ゆえに晩成なため栽培に手間がかかり商品として加工するにも難しさがあったが、「国内最大級の食べ応えあるボリュームにホクホクとした食感や独特の甘み。ほかには無い特徴的な大豆で取り組む価値がある」と、誕生初年度の種蒔きから、生産者や関係機関と共に育成データを蓄積してきた。2009年には「産消協働たまふくらプロジェクト」を立ち上げ、商品化に向けた市場分析やブランディング、販路の開拓、加工方法の研究開発などを実施。北海道立工業技術センターや農業改良普及センター、公立はこだて未来大学、道庁・市・町役所など産学官さまざまな力が集結し、「函館たまふくら納豆」として商品化にこぎつけた。
道南だからこそ作れた名品 生産者と共に守り続ける
「たまふくら」の素材を生かすことを何よりも大切にする納豆作り。毎日行う大豆の浸漬や蒸煮は、日々変化する大豆のコンディションや気候に合わせた調整が欠かせず、素材の味が引き立つタレを付けることで、「たまふくら」独自の味わいをしっかりと届ける。また、発酵食品である納豆の味は人の五感が1番の頼りで、「自分たちがおいしいと信じるものを作るからこそ、謙虚な姿勢が大切」との思いで味を築き上げてきた。完成した「函館たまふくら納豆」は、青々と茂る大豆畑の写真が映えるパッケージに、一つずつ手作業で袋詰め。大豆が実る秋に霜や積雪があると収穫ができず、育成エリアが限られる「たまふくら」は、道南の熱意ある生産者に支えられており、納豆の販売は今年で10年目を迎えた。「たまふくら大豆のおいしさをもっと多くの方に知っていただき、生産者の方に作り続けてもらえるよう、さらなる展開をしていきたい」と工藤社長。函館生まれの名品には、地域への思いがぎゅっと詰まっていた。
株式会社だるま食品本舗
函館市西桔梗町589‐216
☎0138‐49‐3569(代)
問い合わせ時間/9:00~17:00
日曜・祝日定休
ハコラク2019年12月号掲載