【松前】道南虫の会(事務局・函館)は10月末までの松前町内での調査で、これまで道内では2例しか確認されていなかったシジミチョウの仲間「ヤマトシジミ」を100匹以上確認したと発表した。幼虫のまま越冬し、来年の初夏に発生する成虫があれば、道内で定着する可能性もあるという。
同会の対馬誠さんによると、ヤマトシジミは羽を広げた大きさが2・5センチ未満程度、雄の羽は青いことなどが特徴。東北南部以南では頻繁に見られるため珍しくはないチョウだが、道内では1975年に上川管内で確認があったのと、2017年に上ノ国町で捕獲された2例のみ。近年、生息範囲の北上が進んでいた種類で、青森県での定着も2000年以降といい、16年には青森市内でも見つかっている。
同会の調査では、9月1日に松前町内で山下寿春さんが雄1匹を捕獲し、対馬さんがヤマトシジミと確認し、2人で周辺で計8匹を捕まえた。シジミチョウの仲間のルリシジミなどと飛ぶ姿は似ているが、斑紋などに特徴があるという。会員による継続調査で10月末までに100匹以上を確認した。
幼虫はカタバミの葉を好み、比較的温暖な松前であれば、そのまま越冬できる可能性があるという。温暖化の影響もあるとみられ、来年以降も継続的に調査を実施する考え。
対馬さんは「飛翔能力は高くなく移動性は少ないチョウなので、いつ道内に入ったのかは分からない。この秋に捕まえた個体は周辺で発生したのは間違いないだろう。来年5月末から6月にかけて発生する成虫があれば、越冬が確認できるかも知れない」と話す。
一方、この秋の調査では17年にもまとまった数を確認した、渡りをするシジミチョウの仲間「ウラナミシジミ」が2年ぶりによく見られた。継続的に調査をしている「アサギマダラ」は451匹にマーキングを施し、8月18日に北斗市のきじひき高原で放した雄が10月6日に群馬県渋川市で、9月25日に松前町内で放した雌が10月20日に埼玉県北本市でそれぞれ再捕獲された。距離はいずれも約600キロ。本道からの秋の南下ルートでは7、8例目の再捕獲となった。(今井正一)