総合診療と救急診療について
「総合診療科」「総合内科」といった言葉を聞いたことがありますか?この診療科が他科と大きく異なる点は、良い意味で「専門を持たない」ところかもしれません。
日本では高齢化が進んでいますが、高齢の患者さんは例えば心臓、肺、腎臓などと複数の臓器を患っていることも少なくありません。その場合、おのおのの専門医が専門内の知識だけで対応してしまうと気付かないところで弊害が生じてしまう場合があります。そのような場面で、一つの臓器にとらわれず「総合的」な目線で適切な診断や治療を行うのが総合診療医です。
一方、救急診療も総合診療と重なるものがあります。救急外来に来られたばかりの多くの患者さんは「診断」が付いていません。例えば「お腹が痛い」という症状1つとっても、その原因は消化管のほかに肝臓や膵臓、腎臓、膀胱、心臓、血管、また女性であれば子宮・卵巣などさまざまな可能性が考えられます。そういった場面で、患者さんの訴えや診察、検査などから原因を突き止めつつ迅速に適切な対応を行うことが救急医の役割です。つまり「1つの臓器にとらわれず…」という総合診療の根っこの部分は救急診療にも共通するものです。また救急診療に内科的な診断力も必要である一方で、総合診療においても重症な患者さんを迅速に対応する「救急力」は不可欠であり、この2つの関係は切っても切れないものだと考えられます。
このような理想的な総合診療医、救急医であるためにはあらゆる医学分野の知識・技術を幅広く習得しておく必要があり、またそれらを日々更新していく作業も欠かせません。「専門を持たない限界」を自覚し、必要時は速やかにプロフェッショナルに紹介する判断力も必要です。総合診療・救急診療が少しでも函館の地域のお役に立てればと思います。
(ハコラク 2019年10月号掲載)
略歴
平成24年、昭和大学医学部卒業後、今村総合病院、浦添総合病院・救急集中治療部、市立奈良病院・総合診療科勤務を経て、平成31年、函館中央病院内科・総合診療科医長に就任。
函館中央病院
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☎0138-52-1231(代)
http://www.chubyou.com/
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