【七飯】町上藤城の農業、大渡千賀子さんが運営する農園「nk2ファーム」で、ビーツの生産が本格始動した。ビーツの専門農園は道南では初めてで、「七飯が“ビーツの町”と呼ばれるくらい、食卓になじみのある野菜として育ってほしい」と大渡さん。日本で初めて西洋農業が花開いた七飯に、新しい風を吹かせている。
ビーツはカブのような見た目だが、ホウレンソウの仲間。豊富な鉄分やビタミンのほか、他の作物にはあまりない「ラフィノース」と呼ばれる基礎代謝アップや高血圧予防に効果的なオリゴ糖も含んでおり、「食べる輸血」とも呼ばれる。
大渡さんは2016年に野菜ソムリエの資格を取得。農家の父、野沢秀悦さんが以前使っていた峠下の農地で「赤い色は食欲がわく」と赤色の水菜やトマトなどの野菜を育ててきた。ビーツは、友人の勧めから試しに生産。栄養の豊富さや幅広い料理に使えることにほれ込んだ。
5月には、約40アールある農地の半分ほどに種をまいた。種まきから約3カ月後、約300グラムの重さになると収穫期。赤い実の「デトロイト」、黄色の「ルナ」、赤と白のマーブル模様がユニークな「キオッジャ」の3種を生産する。
大渡さんは、ビーツの生産とB型就労支援雇用を結び付けた事業「ビーツ倶楽部」も展開。今月4日には、町本町の「道南福祉ねっと」と共同で種まきが始まった。野沢さんや、大渡さんのビーツを使った「宇宙一キムチ」を10月に販売する函館在住の韓国人調理師、金鉄洙(キムチャルス)さんも参加した。
5月にまいた分のビーツの糖度を計ったところ、スイカとほぼ同等の甘さだったという。大渡さんは「きんぴらやジャム、アイスクリームなどアレンジの幅が広い」と話し、金さんも「食べていくうちに絶妙な甘さに夢中になる。食感もいいので、キムチにもピッタリ」と太鼓判を押す。今後は、大中山地区にある30アールほどの農地を整備して生産地拡大を図るほか、越冬させた「よく寝かせたビーツ」の生産も試みる。(柳元貴成)