函館市消防団は1日、機能別消防団員「通訳サポーター」として、市内の手話通訳者11人を新たに任命した。災害発生時に、聴覚障害者と救助隊員・医療関係者との意思疎通を円滑にする狙いがある。消防庁によると、手話通訳者を消防団員として組織化する例は全国でも珍しい。
任命されたのは、函館手話通訳問題研究会や道南手話サークル連絡協議会に所属する女性11人。1日、市消防本部で開かれた辞令交付式で、市函館消防団の坂口雄一団長が、背中に「手話」と記したオレンジ色のベストと帽子を貸与した。
通訳サポーターは外国人観光客などを念頭に置き、昨年11月に発足。中国語や英語など5言語の通訳8人が任命された。その後、函館聴覚障がい者協会から手話通訳を加えるよう要請があり、「手話も大切な言語」(坂口団長)として新たに任命した。
市嘱託職員の佐直(さじき)優喜子さん(60)は20年以上、手話を学んできた。「団員募集を聞いて、身に付けてきた手話で貢献できるいいチャンス。不安を取り除けるように頑張りたい」と話していた。
聴覚障害者約10人が交付式に立ち会い、手話通訳サポーターが同時通訳した。函館聴覚障がい者協会の石井昌子会長は「胆振東部地震の大規模停電で耳の不自由な人への情報がなかった。対等に会話できるように対応してもらえれば安心できる」と喜んでいた。
サポーターは、消火活動に参加しない機能別消防団員として任命。消防庁によると、同様の活動は沖縄県うるま市での1例のみ確認できたという。(深津慶太)