函館市は22日、同日函館港に寄港した郵船クルーズの豪華客船「飛鳥II」(5万142トン)に天然の函館真昆布約8キロを無償提供した。同船が、江戸~明治時代に日本海で交易を担った「北前船」の寄港地へ向かうことにちなんだ初の試み。当時、道南から船に積みこみ、北陸や関西などに運ばれた特産のコンブを船内で味わってもらうとともに、パネルでPRする。
道南産のコンブは海上交通が発達した江戸時代、北前船を使い、下関から瀬戸内海を通る西廻り航路をたどって大阪まで運ばれた。その「コンブロード」は、一部九州から密貿易で中国へ渡ったとされている。
同船はこの日、旅行会社のチャーター船として港町埠頭(ふとう)に入港。函館からは富山県の伏木富山港に向かうクルーズ船に切り替わり、復路は北海道新幹線で戻る「函館市民クルーズ」の利用客約50人を含む800人ほどが乗船した。同港と共に北前船の寄港地で、途中立ち寄る予定だった山形県酒田港は台風接近のため、着岸が取り止めとなった。
出航前に岡村信夫港湾空港部長が、同船で食材調達などを担当するプロビジョンマスターの西島賢一さんに「だしをとって味わってください」と箱詰めの函館真昆布を手渡した。船内では、みそ汁やタイのコンブ締めとして振る舞われる。レストランには縦85センチ、横60センチのパネルを置いてコンブロードなどを紹介する。
市港湾空港振興課は「北前船を絡めたストーリー仕立てで函館真昆布の魅力を発信したい」とし、今後も取り組みを継続する考え。
同船の函館入港は今回で48回目。初代「飛鳥」を抜き、函館寄港の最多記録を更新した。(山田大輔)