函館出身の大道芸人ギリヤーク尼ケ崎さん(88)の青空大道芸「魂の舞」が19日、千代台陸上競技場で開かれた。今年が街頭公演歴50周年でこの日が米寿の誕生日。大勢の観客が老齢の肉体から放たれる全身全霊の踊りを固唾をのんで見守った。
長年出演を続ける市文化・スポーツ振興財団主催の「ざいだんフェスティバル」のイベントの一つ。長年の親交がある俳優、近藤正臣さんから贈られたのぼりには「踊って生きて五十年 大道芸人ギリヤーク尼ケ崎」と書かれた。多くの観客の合間を縫ってギリヤークさんが車いすで登場。三味線とばちを激しく動かす「じょんがら一代」、観客を誘い込んで舞う「よされ節」を続けた。
続いて、10月の東京での公演に向けて取り組んでいるという未完成の新作「果たし合い」を初披露。手刀で空を切り裂き、黒い装束を脱ぎ捨てて首からぶら下げた刀のつばを振り回すと、観客から次々と投げ銭が飛んだ。最後の「念仏じょんがら」では、頭から水をかぶると「おおっー」と大きな声が上がった。
終演後には誕生ケーキや花束が贈られたほか、同財団の佐々木茂理事長からは感謝状と新しい帽子が渡され、拍手に包まれた。市内美原4、そば店勤務の後藤幸司さん(48)は「以前から見たいと思っていた。体は弱っているんだろうが素晴らしかった。何かを持っていると感じますね」と話していた。
ギリヤークさんは「函館で踊ると(踊りが良かったかどうかを)普通に感じるが、今日は僕が試されているのか、自分の姿を全部裸にされた気がした。踊りは良かったのか、期待外れでがっくりしたか(分からない)」などと話していた。
ギリヤークさんは25日は苫小牧市、26日は札幌市内で公演を予定する。(今井正一)