クルーズ客船入港時に通訳ボランティア活動を長年続ける遺愛女子高校の生徒が今冬、オーストラリア発着の客船を利用した語学研修に挑戦する。全国的にも珍しい試みで、多国籍の乗客が集まる場面で生きた英語に触れ、語学力向上を図る狙い。全乗客に函館の魅力を英語で発表するプログラムも織り込む予定で、函館市も遺愛生のさらなる成長に期待を寄せている。
研修は、12月にシドニーを発着するプリンセス・クルーズ社(米)の「サン・プリンセス」(7万7441トン)で実施。7泊8日の日程で船内のスタッフから業務を学び、締めくくりに船内のホールを使って、英語で発表を行う予定だ。
今年で12年目を迎えたJR函館駅前や岸壁で行う乗客への観光案内は、各方面から表彰を受け、高い評価を得ている。次のステップに踏み出し、生徒に一層の成長を促したいという同校の意向を聞いた市が、同社日本事務所のカーニバル・ジャパンに掛け合い、客船での語学研修が実現した。
同社によると、大学や専門学校の卒業旅行として学生の乗船はあるが、研修での利用はないといい、船木健営業課長は「海外客と触れ合うだけにとどまらず、世代間交流にもつながる」とし、教育の場としての客船の活用を今後も積極的に検討する方針だ。
同社は29日、研修旅行に参加希望の生徒と保護者ら約40人を同日函館港に寄港したプリンセス社の「ダイヤモンド・プリンセス」(11万5906トン)に招き、下見を兼ねた見学会を実施。生徒は、豪華な船内に目を輝かせながら、研修へイメージを膨らませた。
英語科2年の白須柚香さん(16)は「岸壁から眺めるだけだった船内を知ることができて楽しかった」と笑顔。同2年の葛西桐子さん(16)は「ボランティアでの経験を生かし、研修では積極的に英語を話したい」と目を輝かせた。
ダイヤモンド・プリンセスの日本発着ツアーには南半球から飛行機で訪日し、乗船する海外客も多い。市港湾空港振興課は「今後も続く取り組みにしたい。日本語がほとんど通じない厳しい環境だが、大きな舞台で精一杯函館の魅力を伝えてほしい」とエールを送る。(山田大輔)