函館出身の作家・佐藤泰志(1949~90年)の同名小説を原作とした映画「きみの鳥はうたえる」(三宅唱監督)の完成披露試写会が11日、函館市民映画館シネマアイリスで開かれた。三宅監督と主役の「僕」を演じる柄本佑さんが舞台あいさつを行い、函館のファンに向けて制作秘話や作品の魅力などを語った。映画は8月25日から同館で先行公開。9月1日より東京・新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国で順次公開される。
同館の開館20周年記念作品として制作され、佐藤初の芥川賞候補作。昨年6月に市内で撮影を行った。企画・製作・プロデュースを手掛けた同館の菅原和博代表は「(映画製作は)まるで映画の神様が微笑んでくれたかのようなすてきなこと。機会があればまた製作にチャレンジし、通常の映画館業務も末永く続けていきたい」と述べた。
上映後、三宅監督と柄本さんが登壇すると、客席からは温かな拍手が送られた。三宅監督は撮影を振り返り「二度と戻れない若い時間を考えることを大事に、年齢を強く意識した。映っていない時間の過ごし方も通常の映画とは違い、(役者やスタッフと)一緒に過ごす時間が長く、その積み重ねが映画に出ている」と強調。柄本さんは「14~15年役者をやってきたご褒美のような現場で、幸せな時間だった。『僕』というつかみどころのない奴じゃなくて、つかみどころのなさにも具体性を持たせた」と語った。
映画は主人公の「僕」と友人「静雄」(役・染谷将太さん)、「佐知子」(石橋静河さん)の3人のひと夏の人間模様を描く。原作の骨格をそのままに、作品の舞台を80年代の東京郊外から現代の函館に移し、現代の物語として翻案した。三宅監督は「3人が函館で初めてそろったときに生まれたものが間違いなくある。本当にいい映画ができたと思っていて、いろいろな人に愛される友達のような映画として感じてもらいたい」と呼び掛けた。(蝦名達也)