【北斗】市三ツ石347の私設ギャラリー「日の丘自然美術館」の館主で、昨年夏にすい臓がんで死去した彫刻家の上田公夫さん(1940―2017年)の作品展「メモリアル・エキシビジョン」が、同ギャラリーで開かれている。木材や金属、プラスチックなど上田さんが思いを込めて創作した造形作品95点が並んでいる。10月29日まで。
上田さんは日高管内浦河町生まれ。浦河高校卒業後、道学芸大札幌分校特設美術課程に進み、彫刻の技術を会得。卒業後は釧路や苫小牧、札幌で美術教諭をしながら創作活動を続けた。道美術協会展など公募展への出品のほか、個展の開催、グループ展への参加など幅広く活動。94年には生涯創作に打ち込むため、教職を早期退職し、98年には理想の地を求めて三ツ石に移り住んだ。2008年には長年の夢だった2階建てのギャラリーを自ら設計し、自宅隣に開設した。
作品に真摯(しんし)に向き合い、生活の中心を創作にささげた上田さん。三ツ石移住後は、豊かな自然の中で悠々自適に作品を生み出した。特にギャラリーの建築は作家活動の集大成だった。死去する3カ月ほど前にがんが見つかり、昨年7月14日、入院先の病院で亡くなった。
今回、大学時代の同期で、親友の画家の近堂隆志さん(78)=函館市在住、行動美術協会会員=をはじめ、親交のある作家や教え子たちが作品展の開催に協力。館内には透明なプラスチック製の立体を使い、湖面の織り成す表情を表した造形作品をはじめ、初期に製作したステンレスの花器などを展示。屋外の庭にも木彫作品を並べ、遠くの函館山や津軽海峡を望む風景と融合したインスタレーションを形成している。
このほか、入院先の病院で描いた絶筆のデッサンも展示した。作品展を監修した近堂さんは「作品はオリジナリティーがあり、ユニーク。今までやったことを繰り返すことはなく、離れ技のようにぱっと切り替えるのが彼のすごいところ。体に染み込んだポリシーがあった」としみじみ語る。
妻の雅さん(79)は「ギャラリー10年の記念に作品を展示することができて良かった。天国で喜んでいるはず」と感慨深げに話している。
ギャラリーは土曜、日曜、月曜のみ開館で、時間は午前10~午後5時。観覧無料。問い合わせは同ギャラリー(0138・75・3557)へ。(鈴木 潤)