東京大学地震研究所は8日、江差町から七飯町まで54キロにわたって、地下にある断層の形状などを明らかにする調査を始めた。観測データから断層の三次元モデルを作り、断層型地震による津波高や揺れの強さをより正確に予測した上で、将来的には自治体ごとの防災対策に役立ててもらうのが狙いだ。
文部科学省の「日本海地震・津波調査プロジェクト」の一環で、道内では昨年度、石狩川河口~夕張市で実施。地下に向けて人工的に振動を起こし、断層などにぶつかって反射・屈折した波を地上の地震計で観測して、地下の構造を探る。
渡島半島には、七飯町から函館湾西部まで南北に延びる「函館平野西縁断層帯」が存在するが、同研究所の佐藤比呂志教授は「実際に地震が発生する地下10数キロでの断層の傾きなどのデータが不足していて、正確な地震予測ができない」とする。また、地下に隠れた伏在断層の発見、揺れを増幅する土砂の厚さも観測するという。
同研究所は8日、厚沢部町内の国道227号で振動を起こす「バイブロサイス車」と呼ばれる車両や計測機器を報道陣に公開した。バイブロサイス車は地面に押し付けた鉄板を油圧で震わせる。10~150メートルごとに止まって振動を地下に伝えて移動を繰り返す。
七飯町まで渡島半島を横断する調査を終えた後、上磯ダム公園(北斗市)付近の8キロでも調査。19日までに2区間計62キロ、1900カ所で反射・屈折した振動を観測する。
佐藤教授は、東日本大震災の前に内陸や日本海側で地震が起こったことに触れ、「今後巨大地震の恐れがある千島沖と、道内の断層との関連も明らかにできれば」と話していた。
同研究所の調査と並行し、海洋研究開発機構は奥尻島沖で海底下の調査を実施している。結果は来年5月の日本地球惑星連合の学会で発表する予定。(深津慶太)