コンブやウニ漁などで海底を覗くために使用する「箱眼鏡」を製作する中谷製作所(函館市美原4、村川陽一代表)がこのほど、真水と海水の断層によって生じる視界不良を解消する新製品「よけとるくん」を開発し本格販売に乗り出した。製品の核となるレンズの部分に特許技術が使われており、従来の製品と比べ操業効率を大幅に向上できることから、漁業関係者が熱い眼差しを向けている。
箱眼鏡は漁師が船の上から海底の様子を確認するのに使われるが、製品の多くは実際に使用すると「もや」がかかったような状態になることが多かったという。
これは河川から流入する真水などの影響で、海水面上に真水と海水の断層ができ、光の屈折率が変わることで発生する現象が影響している。これを解消するために、浮力が働く箱眼鏡に重りをつけて沈めるなど工夫を凝らしてきたが、体力面での負担が大きく、長年にわたって漁師を苦しめてきた。
新製品開発のきっかけとなったのは2年ほど前。オホーツク地方に住む漁業関係者の友人から、この「もや」を解消した製品が作れないかと相談を受けたことから始まった。
従来の箱眼鏡はいかにして海水を眼鏡内に入れないかが鍵だったが、知人の発案をもとに眼鏡内に海水を入れるという逆転の発想を加えたことで、開発は一気に加速。すぐに試作機を作り、知り合いの漁師などにテストしてもらいながら改良を重ね、昨年秋ごろ完成した。
よけとるくんは「真水をよける」と「(水産物が)余計に獲れる」の意味がかかっている。性能の核となるレンズは2重構造で、間に海水を注入することで重さが増し、下のレンズが真水層を突き抜け海水層に達するため、良好な視界が確保できる仕組み。製品には上のレンズが上下に動く可動式と固定式の2種類あり、さらに頭の大きさや筒の長さなど、個人に合わせて製造する。価格はオープン。
実際に使用した漁業者からは、海水を注入することによる重さは気にならないという声がほとんどで、「石とウニの違いがはっきりとわかるようになった」「コンブの厚さまで確認できるのでとても便利」といった喜びの声が寄せられているという。村川代表は「よけとるくんを使ってもらうことで操業効率が上がり、漁業者の負担軽減につながる。さらに所得向上に役立てば」と話す。漁協の購買部などで取り扱っている。製品に関する問い合わせは同社(0138・46・3828)へ。(野口賢清)