リバプールに行ってきた。ビートルズが育った街である。少し上の世代が熱狂するのをまぶしく見ながら育った私は、レコードも何枚か持っているし、歌える曲も多い。留学中の長女を訪ねるのが目的だったが、せっかくなので同行した次女と三人でビートルズに縁のある場所を回る観光バスに乗り、博物館にも行ってきた。
ビートルズが誕生し、世界中を魅了するようになるまでの物語は想像以上に感動的だった。彼らは音楽が好きな普通の少年たちだった。有能なマネジャーとの出会いで世界への扉が次々に開いてゆく。好条件が重なったとはいえ、彼らの成功の最大の鍵は揺るがない情熱と自信だったことは間違いない。だが同じくらい情熱を持って努力しても世界を舞台に活躍できるミュージシャンはごくわずかである。その分かれ目はどこにあるのだろうか。
どんな分野でもビートルズのようになれる可能性はゼロに近い。だが私は思った。ビートルズはもしあれほど売れなかったら、今でも4人でリバプールのライブハウスで、もめ事を繰り返しながらも楽しくライブ活動を続けていたのではないだろうか。今年も受験期の日本。合格か不合格かでひとまず見える未来はわずか数年先までのことだ。人生が成功か失敗かは全く別である。そもそも人生に失敗はない。私はビートルズからなにか大事なことを学んだ気がしている。(生活デザイナー)