函館市は、人口減や高齢化に対応するため、一定のエリアに公共施設や住宅を集積する「立地適正化計画」の策定作業を進めている。産業道路(道道函館上磯線)の内側を対象に20年後のまちづくりを進めていく内容で、居住を誘導し1ヘクタール当たり40人の人口密度を維持する。本年度内の計画策定を目指す。
都市再生特別措置法が改正され、2014年に創設された制度。市町村が「コンパクトシティー」を実現する同計画を任意に策定できる。計画に基づいた施策を展開する場合、国から補助金を受けられるなどのメリットがある。市は市都市計画マスタープランの一部と位置づける。計画期間は18~30年度のおおむね10年間。
同計画では、病院や福祉センター、商店などの都市機能を誘導する「都市機能誘導区域」と、居住を促す「居住誘導区域」を設定。都市機能誘導区域はJR函館駅周辺と五稜郭を核とした中心市街地地区、美原地区、元町・末広地区、湯川地区を主軸にして検討。居住誘導区域は産業道路の内側を基本とし、都市機能誘導区域を包含するような形とする方向。
市の人口推移は、40年に10年(27万9000人)比4割減の17万5000人、60年に6割減の11万3000人となる見通し。60年には生産年齢人口(15~64歳)が、老年人口(65歳以上)とほぼ同じ割合になると予想。市街化区域の人口密度は10年に1ヘクタール当たり52人だったのに対し、40年には32人にまで低下。人口減で公共交通の利用が大幅に減り、公共インフラ施設の更新にかかる市民一人当たりの負担額増も見込まれる。
市が昨年9月に行った今後のまちづくりに関する市民アンケートでは「交通利便性の高いエリアに施設を集約し、住みやすい環境を整備すべき」との回答が約7割を占めた。
市は13~17日、市内5カ所で市民との意見交換会を開いており、市都市計画審議会の意見も聞いた上で計画案を策定。来年2月のパブリックコメント(市民意見公募)を経て、年度内に決定する。
市民の間には「実現は厳しい」との声もあり、市都市建設部は、計画の着実な推進に向けて独自の誘導策を検討するとともに「長いスパンで制度を実現したい」としている。(山崎大和)