国の重要文化財(重文)で、函館市元町のハリストス正教会の聖堂が8月下旬から、1916年の建築後初の耐震診断を行っている。100年以上の歴史ある建物で、同教会は「診断の結果、耐震補強の必要があれば2020年にも工事に取り掛かる」としている。
重文を所管する文化庁は、11年の東日本大震災後から、建物を改修する際には耐震診断や補強を合わせて実施するよう所有者に求めている。
同教会は、8月23日から耐震診断を実施。今月11日までに、れんが造りの壁の一部をくり抜くなどしてサンプルを採取した。専門業者が持ち帰り、調査結果をもとに工事計画を策定するという。診断の費用は約2400万円で、国が65%、市が17・5%を補助する。
市教委文化財課の蛭子井慶治課長は「重文なので外観や内装は基本的に変えられないため、具体的な補強方法をしっかり考えなければ」と話す。
同教会では、重文登録時から拝観献金として200円を設定。工事となれば多額な経費が掛かることから「今回の耐震補強工事へ向けて、観光客だけでなく身近な市民にも見ていただき、協力してもらいたい」と呼び掛ける。診断中も通常通り見学可能。
聖堂は、日本で初めて設置されたロシア領事館の付属聖堂(1860年)が発端。1907年の函館大火で焼失後、16年に再建、83年に重文に指定された。(三好若奈)