今年は七夕のしつらいを変えた。竹に短冊を下げるのではなく、古い糸巻きと五色の糸ならぬ紐(ひも)。それを料理研究家だった義母が懐石のこころえを書いた巻物に添えた。そして書家でもあった義父が使っていた硯(すずり)と筆。七夕は女性たちが機織りや裁縫、書の上達を願う日だからである。
七夕は端午の節句などと並ぶ日本の五節句の一つだが、その歴史や由来は調べるほど面白い。函館はすでに終えたが、北海道の広い地域では8月である。
竹に短冊という装飾は江戸時代に定着した。この短冊の起源は梶の葉だったという。細かい毛の生えた葉には筆で文字が書けるらしい。葉なら川に流しても問題はあるまい。実りの秋を前にした豊作祈願やお盆の行事と重ねる地域もあるため、ナスやキュウリなどを窓辺に飾るお宅も多い。
だが私が最も注目したいのは、女性が主役の節句という点である。土俵やトンネル工事など女性を不浄のものとして立ち入りを禁ずるところはまだあるが、収穫を前に女性の穢(けが)れを払うという文化的意味合いが七夕の背景にはある。若い女性が水辺で身を浄めて神への貢ぎ物として機織りをしたという七夕の伝説はなんとも興味深い。
織姫のラブストーリーだけではないのである。織物、裁縫、書など女性の芸事の上達を祈願したのが起源なのだから、七夕はひな祭り同様に女性の節句として注目されるべきだと私は思う。(生活デザイナー)