道南いさりび鉄道(函館、小上一郎社長)は、社員以外に線路上のポイントやホームを除雪する「冬季パートナー社員」を雇い、冬の鉄路を守っている。対象は七重浜―木古内間35・1キロで、今季は57人を地元採用。厳しい冬を迎える北海道での安定輸送に貢献している。
パートナー社員はJR北海道時代から続く契約社員制度で、昨年12月1日~今年3月31日の雇用契約を結んでいる。自社だと人的問題や、夏季の仕事がないため簡単に通年雇用社員を増やせない事情があり、パートナー社員は欠かせない存在だ。
今季はポイント除雪が51人(うち新人14人)、ホーム除雪が6人(同1人)おり、木古内、知内、北斗、函館、七飯の5市町から採用。職種は農業や漁業、建設業などさまざまで、同社が給料を支払う。
冬季の安全の確保には、ポイント不転換を防止することが重要で、パートナー社員が線路上の雪や氷塊を脇へ押しのける作業を行う。ローテーションを組み、七重浜―泉沢は宿泊2人、日勤2人、札苅―木古内は宿泊3人、日勤2人で対応。降雪が少なくても線路やホームを点検・巡回し、運転士が見えない場所に目を光らせ、安全確保に努めている。
同社の勝又康郎・運輸部駅業務担当課長は「いさりび鉄道は地元の皆さんに支えられている。協力がなければ、冬の運行が成り立たない」と強調する。作業時の事故を防ぐため昨年11月28~30日には安全講習を開催。机上の講習に加え、現地でも安全に関する情報を確認した。
担い手不足という課題も浮かび上がる。沿線の過疎化・高齢化が進み、パートナー社員をリタイヤした人に替わり、他の人を補充したくてもなかなか後任が見つからないという。大雪が降った後、一人暮らしの高齢者宅の除雪を手伝うため、ホームの除雪まで手が回らないと言われるケースも。本来はホーム除雪作業員を配置していた七重浜や清川口、上磯に関し今季は人員を配置していない。
勝又課長は「若い人を補充したいが、仕事を求め札幌や本州に出ていくため、いい人材に巡り合うのが難しい。パートナー社員の確保は道内の冬の鉄路を守っていく上での重要な課題だ」と話している。(山崎大和)